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大昔の地図
机をたたいていた白く硬いものがひっこむ。それはシエルの指先だ。
かしゃかしょと軽くかたいものが重なるような音がして、シエルが動くのがわかる。
あのころの地図か、と立ち上がる気配。
山積みの書類の上に、シエルのとがった頭の先がみえた。
かしょかしょと歩くたびに音がするのは、関節が動く音だ。
「地図、地図、ああ、『抜け道』があるころのものだな」
「『抜け道』?それって、すきなところに出られたっていう?」
「ただしくは、唱えた先にでられる『魔法で整えられた抜け道』だ。 いまじゃもうないし、そんなものなくても道はととのってるし、辻馬車も捕まえられるしな」
かそかそと、シエルの指が紙にふれる音がする。ロジーはこの音をきくと、心が落ち着く。
「 ―― そんな地図をさがしてどうするんだい? まさか、行ってみようというわけじゃなかろうね」
地図をさがす音が止まっている。
きっとシエルはもうそれを見つけていて、ロジーがそれを必要としてる理由を、知りたがっている。




