統合前
机をたたく白くとがったものが増えた。それが、トトトン、とリズムをもって動き始める。
「もしかして、シエルはそこに行ったことがあるとか?」
ロジーは帽子をとっていつものように近くの書類束の上にのせ、古く小さな椅子をひきよせた。ロジー用の椅子だ。
かすれた声が、行ったことなどないさ、とわらいをのせてこたえる。
「 わたしは《ビロオランド》と呼ばれる地下にすんでいたんだ。光もない暗闇の世界。 ときどきは《グレーランド》に出てみたりしたけど、そのころ《グレーランド》に住む人たちは、《ビロオランド》を、悪いことをしたら放り込まれる場所だと思ってた。 ただ単に、光に弱い《種族》たちが住んでいただけなんだけどね。 《ボトヌゾーン》はそのころはじまった『統合』、《ビロオランド》と《グレーランド》のまじわる場所だ。 《グレーランド》の光を吸った《ビロオランド》が、少しずつ明るくなっていったころだな。 王様ジャックが、どの《種族》もみな同じようになるのを『望んだ』からだ。 ―― そのころの城だな。ああ、たしかにあっちにあった。それぞれの《種族》が、まだ住む《ゾーン》を決められていた。 あそこは、ダンプヘル・・・いや、となりのダンプヒルだったかな」
「それだ!『ダンプヒル』っていってたよ」
とりだしたノートをめくりながらロジーが指をならし、それを地図でみたいんだ、と頼む。




