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※※ ― 城の中 ―
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ジャックの城はきょうもたくさんの種族でごった返していた。
なにしろいつのころからか、城への出入りがひどく自由になったのだ。
昔は門番がいて、選ばれた数人しか通れなかった跳ね橋も、いまでは馬車に乗っているものならたいていそのまま入ってこられる。
おかげで城の中庭は、いつもその馬車と御者たちで埋まっていて、御者どうしのパーティーまでひらかれている。
黒いマントに黒いシルクハット姿のアルル・ラムジイは、いつものようにそのごちゃごちゃとしたかたまりがまるでないかのように足をすすめ、奥の部屋へとすすんでゆく。
大広間には常にたくさんの人があつまり、いろんな話をしている。
大昔は、天候と作物と種族間の出来事しか話すことなんてなかったのに、今ではいろんなことが話題になり、みんながいろんなことを知っていて、あいてにいろんなことを教えたくて、おしゃべりはつきない。




