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タダモノじゃない
「 まあ 」 と、さっきまでの勢いがうそのように閉じた口をもごもごとさせ、車いすの背もたれにからだをあずけた。
「 ―― もちろん、役人が危険だと決めたから、だな」
「それだけです?」
ロジーはすかさずきいた。
老人の目が、うかがうようにこちらをみつめるのに、だめおしする。
「シンプソンさんは、その『城』について何かしってるんじゃないですか? ―― みんなが知らないようなことを」
効果があったようで、もごもごしていた口がまた、ひっぱられたように、にっとわらいをうかべる。
「おまえさん、やはりタダモノじゃあないな。 このわしに目をつけて、はなしをききにきたってだけでもたいしたもんなのに、 ―― このわしの口を割らせるとはな」




