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禁止区域
「その城は、北、 ―― に、ある」
「『ある』?」
現在も?
「むかしの『北』は、いまじゃだれも棲まない地区になってるだろう? 『ボトヌゾーン』と呼ばれた暗闇のはじまりがあった場所の近くだからな。 いつからか、その暗闇はどんどん広がってゆくと噂になって、役所も居住禁止区域にしたろう? ―― だがな、禁止区域にしたほんとうの理由は、そこに、あの城があるからだ」
《自分だけが知っている》と、その顔がしめしている。
「なんでです? その城に、だれもいれたくないからってことですか?」
「ああ。その城ごとボトヌゾーンみたいに近寄ったらダメだってことにしたかったのさ」
「なぜ?」
「そりゃ、もちろん、 ――― 」
ここまできて、ディル・シンプソンはとつぜん何かに思い当たったように口をとじた。




