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あんたはついてる
またおとずれたロジーをキーパ夫人がにこやかにでむかえ、きれいに掃除もゆきとどいた居間をぬけると、《書斎》だという部屋で待ちわびていた老人に紹介された。
ディルは、予想よりもずっと若々しく、言葉もはっきりしていて、耳も遠そうではなかった。
目が、キラキラとこどものように輝いていた。
きっともう聞いていたのだろうロジーの職業を耳にするまえから口元は、にやけていたし、《むかしのはなし》をききたいというと、指をならして、あんたはついてる、とその指をむけた。
そうして、 ―― ディル・シンプソンによる、ながくて、あちこちとんで、まとまりがないけど、すごく楽しい『むかしばなし』がはじまった。
たしかに、その年寄の話はおもしろかったし、しゃべりかたも身振り手振りがつくうえに、声の抑揚まで考えられ、ロジーは子どものころ街中でみた箱の中でくりひろげられる人形劇を思い出した。




