ものしりじいさん
局長は眼鏡をすこしもちあげてから、まあいいだろう、と手元の紙に走り書きした住所をさしだした。
「 その『ものしりじいさん』は、たしかに『ものしり』だが、ここんとこ、もうだいぶぼけてきてるし、・・・いろいろあやうい。 口にするのも、ほんととうそがごちゃまぜになってるから、まあ、 ―― あまり、あてにするなよ」
「でも、よけいおもしろい記事になるかも」
ロジー、と眼鏡越しににらんできた局長がペン先をこちらにむけて刺すようにした。
「 ―― 新聞はおもしろくても『うそ』はのせない。それだけは、覚えておけ」
帽子をかぶり、上着に腕をとおしたロジーはなだめるようにうなずいてみせる。
「知っています。あやしいとおもったら、断言せずに読者に考えさせろってことでしょ?」
オジルがのどにつかえるようなわらいをこぼし、もう立派な新聞記者だな、とほめるようなことを言ったが、局長ににらまれて仕事にもどる。
「ともかく、頭を使って記事をかけ」
まるで、普段はつかっていなようなそれに不服な顔をむけて、局長の手から住所の紙をひったくった。




