7話 魔王の復活
地下へ続く道は暗闇に包まれていた。
狭くて薄暗い通路は、じめじめとした湿気に満ちている。
壁は土や岩石でできており、
ぬめりがあり、触れるたびに指先に微かな冷たさが伝わる。
足元は不均等で、小石や岩が散乱しているため、
慎重に歩かなければならない。
灯りは皆無ではないものの、弱々しく揺らめく。
「……? あれ いつもの姫じゃあない?」
ミドルが心配そうな顔で覗き込んできたが
「大丈夫」と伝えた。
石の階段を降りると目の前には大きな扉があった。
ミドルが扉を開くと、一筋の光が闇を切り裂く。
封印の間は静寂に包まれている。
岩盤の壁に取り囲まれた空間の中で、
神秘的な雰囲気が漂っている。
足元には祭壇があり、
その上には複雑な文様が彫り込まれた石版が置かれている。
その彫りの中を光っている水が通っている。
水の光だけでこの空間を明るく照らしている。
水、石板が封印の鍵であり、
魔王が封印されていることを感じさせる。
空間は静寂に包まれているが、
時折微かな風が吹き抜け、
湧き水がわく音が反響し、
不思議な響きを奏でる。
「うわぁー きれー!
この音 音楽? 伝承歌?
こんな幻想的なところ秘密にしないで
みんなに見せてあげればいいのに
ミドルもそう思うでしょ」
手が震える
声が震える
ミドルは黙って頷いていた。
「そうだよね…」
ミドルが私の震えている手をとった。
ミドルの手も震えていた。
「僕も震えているよ
あの日姫に救ってもらってから
夢がかなうんだって」
ついにこの時が来てしまった。
私はすべてを受け入れる覚悟で目を瞑った。
ミドルはいい人…
頭では分かってはいるものの
目から涙がこぼれてしまう。
それを察してか、
ミドルはキスをおでこにした。
「やーめた」
「絶対に姫を振り向かせてやるからね
キスはそん時までお預け」
そう言うと私の手を引き
「ちょっと だめよ… だって」
「いいからいいから
たとえ魔王が復活しても僕が姫を守るから
大丈夫 俺にとっては姫がすべてだから 帰ろう」
私たちはその場をあとにした。
【トキハキタ】
地上に帰ると父上と母上が待ち構えていた。
父上の顔はかなりニヤついている。
「どうだった マリア
キスの味は大人になった気分か? ん?」
父上が私の薬指を見て
手を取り上げた。
「ま、まさか お前等、
儀式を行ってないのかぁ!?」
地下から邪気が吹き上げる。
美しかった水は凍り付き
床が震動し、壁がひび割れる。
黒い闇が、銅像を包み込んでいる。
闇は次第に強くなり
空は巨大な魔力が渦巻く。
そして圧縮した闇から何かが現れた。
真っ黒な魔力をマントの様に纏いなびかせ、
顔がない白い仮面を被り
角が二本ある人…
魔王が空中を漂っていた。
魔王が手をかざすと
衝撃破のような魔法が放たれた。
「ま、まさか…」
周りの人々が衝撃破に飲まれた瞬間
時が止まったかのように全く動かなくなってしまった。
「パパ、ママ… みんな…」
魔王は一瞬で私の前に現れ
私のティアラにある宝石を指さす。
「我の魔法が聞かぬ。
貴様がこの時代の姫か」
「姫から離れろ!」
ミドルが魔王に切りかかるのを
魔王はよけた。
「それが封魔の剣か…」
魔王は再び空中を漂う。
仮面から表情は分からないが
うっすらと笑っているように感じる。
「僕が守るって誓ったからな
お前はここで倒す」
ミドルが魔王に切りかかるも
魔王は再び消えた。
その瞬間、私は宙を舞っていた。
私は魔王に抱き抱えられ
空中を漂っていた。
「み、ミドル!」
「姫ぇー」
ミドルは剣を構える。
「……」
魔王は空中に手をかざすと
そこに魔法陣が現れ、
中は時空が歪んでいた。
「ま、待て 消えるな 待ってくれ!
頼む…俺には姫しかいないんだ…」
ミドルは封魔の剣を放り投げ
躓きながら、四つん這いになりながら
追ってきてくれている。
「ミド…」
魔王と私が魔法陣の中に入り込むと
魔法陣の中の空間が閉ざされた。
「うぁあああああ」
歪んだ時空の中ミドルの叫び声だけがこだました。
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筆者が泣いて喜びます。
⚫︎最恐オーガは他種族女子と仲良くなりたい 完結済
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他種族の接触が禁じられた世界
最恐のオーグンが他種族の女の子と仲良くなりたくて人間の王子と旅をする物語です。
お馬鹿で変態だけど純粋なオーグンの冒険を覗いてみてください。