6話 鎮魂祭
辺りは漆黒の闇に包まれ、
何も見えない暗闇の中
私は一人静かに漂っていた。
「…… ここは」
闇の底からみんなの顔が泡となり上がっていく。
「パパ ママ… レイナ… みんな…」
手を伸ばすも触れると割れてしまうような気がして
触れる事すら出来ない。
そうやって見守っているうちに
闇の中へ消えて行ってしまった。
ミドルの泡が目の前に来る。
「み ミドル? だめ 消えないで」
ミドルは悲しそうな顔をしている。
手を伸ばし
泡に触れた瞬間泡がはじけてしまった。
「一人にしないで」
身動きが取れず、
逃げることもできず
ただ絶望が心を覆い尽くし、
恐怖に打ち震えてしまう。
【我を解き放て】
「姫 姫 ちょっとマリア!」
目を覚ますと
目の前にはレイナがいた。
夢…?
ベッドは汗でびちゃびちゃになっている。
夢にしてはリアル過ぎる…
「もう ありえないんだけど
鎮魂祭当日に寝坊するなんて
主役でしょう?」
「今の夢は…?」
「ちょっと早くしなさいよ 」
レイナに腕を引かれ闘技場に着いた。
最上段の王族の椅子に座る
ミドルは闘技場の中央で剣を握りしめ、
覚悟を胸に深く刻み込んでいた。
「ほらもうミドルの番始まっているじゃない」
彼は一瞬静まり返り、
周囲の風や自然の響きを感じながら、
全身に力を込める。
そして、大きな一歩を踏み出した瞬間、
戦いの火花が散った。
「さあさあ 鎮魂債も大詰めになってきた」
審判なのか、戦う二人の中央で解説の方が語っている。
「この国の平和と繁栄の理由が
伝統として行ってきたことだぁ!
魔王の呪いで王族は女しか生まれず
強きものが勇者となり
王女とともにこの国を守って下さっている」
相手の攻撃が容赦なく襲い掛かる。
ミドルはその瞬間、
身のこなしを軽やかに変え、
敏捷な動きで回避する。
剣舞のような腕の振りと足さばきで、
彼は相手の攻撃を巧みにかわしながら反撃へと移る。
「きゃー ミドル様 かっこいい」
「やっぱりミドル様よね
爽やかで強くて 姫にお似合いだわ」
「あー私も姫として生まれてくればなぁー」
やっぱりミドルのファンが多い。
周囲には、戦いの音が轟き、大地が震える。
ミドルの闘志は消えることなく燃え続ける。
「王国万歳 マリア姫ばんざーい」
私には守るべき人々がいる。
朝のは夢だけど
私への警告…
いつまでも逃げてばかりじゃあミドルに悪いもの…
私のわがままを封印さえすれば
みんな幸せになれる…
そして、ミドルの最後の一撃が繰り出される。
彼の剣は一刀が相手の頭上で止まった。
闘技場は一瞬静まり返り、
勝利の息吹が空気を満たす。
「そこまで!」
沸き上がる城内
「うああああ」
ミドルが爽やかに剣を振り上げる
「盗賊だった僕を姫は救ってくれた
今度は僕が姫を幸せにするんだ」
【我を解き放て】
私のわがままでみんなを巻き込むわけにはいかない
私は伝統通り、ミドルに退魔剣を与えた。
街の灯りが一つずつ灯り始めた。
道路や建物には暖かな光が灯り、
屋台や芸達者な者たちには人だかりができている。
夜の街が幻想的な雰囲気に包まれた。
そして、鎮魂祭のもう一つの表のメインイベント。
願いや思いを込め 作った灯篭を夜空に放り投げる。
広場には私たちを中心に
多くの市民たちが火を灯した灯篭を持ち集まった。
私とミドルの灯篭を夜空に放り投げるのを合図に
国民達の灯篭が宙に放たれた。
灯篭は空中でゆっくりと舞い踊りながら、
その明かりを周囲に広げていく。
幻想的な光が闇を彩り、
星々と競い合うように輝く。
私の灯篭には願いや思いは無かったが、
それでも心を奪われるような感動があった。
そして、遥か彼方の山々へと消えていく。
灯篭は闇の中を進み、遠くへ旅立っていくのだ。
広場は灯篭の明かりが消え去った後も、
しばらくの間静寂が漂った。
「ふたりとも こっちへきなさい
今度はお前たちが後世に伝えるのだから」
しばらく余韻に浸っていると
両親が私とミドルを呼び出した。
言われるがままついていくいくと、
私のお気に入りの場所
城内の中庭の銅像へ連れていかれた。
王族だけの秘密の中庭。
ここから湧き出た水が王国中に張り巡らされた水路を通り
国民の水となる。
先ほどからうっすら感じていたが、
水が光っている。
光る水が湧き出る銅像。
これもまた幻想的な風景だった。
「私たちの最後の仕事ね 寂しいような嬉しいような」
「なに、何も変わらないさ」
中庭の銅像と同じようにキスをする二人
二人の薬指の紋章が光り
銅像が光り動き
ゴゴゴゴと音をたてて
地下への道が開かれる。
「マリア ミドル 伝承歌
いや儀式は分かっておるな」
「一生忘れられない経験だもの
楽しみなさい」
そう言うと私たちを地下に行くよう促した。
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筆者が泣いて喜びます。
⚫︎最恐オーガは他種族女子と仲良くなりたい 完結済
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他種族の接触が禁じられた世界
最恐のオーグンが他種族の女の子と仲良くなりたくて人間の王子と旅をする物語です。
お馬鹿で変態だけど純粋なオーグンの冒険を覗いてみてください。