5話 小説のような恋がしたい
「われはもう力も名誉もいらない
ただお前が幸せでさええいてくれれば…」
何度も読み返した、この小説の名言。
表紙は厚みのある革で覆われており、時間の経過によって色褪せてしまったいる。
革の表面には古びた模様やしわがあり、
縁取りには装飾的な彫刻や金属の飾りが施されていた。
はぁーなんて切ないんだ、バベル…
姫と敵国王子の禁断の恋…
お互いに恋をしながらもかなわぬ恋。
なんでこんなにドキドキさせられるのだろうか…
私も好きな人くらい。自分で決めたいな…
…好きな人いるわけじゃあないし、
これが作り物なのはわかっている。
「小説みたいにいかないよね
だからもう一回よもー
ぎゃぁあー!」
ドアの前で腕を組んだ女性が立っていた。
私と同じ黄金色髪は背中に美しく波打つ。
身体は引き締まっており、力強い筋肉が垣間見え、
鎧や騎士の装束がその姿をより魅力的に引き立てている。
女性らしい曲線と騎士としての堂々たる姿勢が融合した彼女の姿は、
見る者の心を奪われる。
「レイナ!
いつからそこにいたの?」
彼女は私の一つ上だが、叔母にあたる。
お母さんの種違いの妹。
我が国の文化的に扱いに困る存在だった様だが
私にとっては双子の姉みたいなもの。
本人の希望もあって今は騎士として従事している。
「ノックしてるのに、あんたが全く気付かないからでしょ?
外まで独り言の奇声が聞こえて、みんな心配してたわよ」
そんな、奇声を上げた覚えは無いんだけれど…
「またそんな古い小説読んでるの?
秘密図書館から盗ってきたんだっけ?
何回目?」
私は一切触らない
部屋のパイプオルガンの所へ行く。
「私はこの歌の方が好きよ」
ガコンと蓋を開けて
パイプオルガンを弾き
伝承歌を歌いだした。
その歌声は、しなやかで優雅な旋律とともに、
清らかな声が天高く舞い上がるような感じがした。
なんと美しい歌声だろう…
私もこんなに美しく歌えたら
この伝承歌を好きになれたのだろうか…
…いやそんなことはない。
「もし生まれ変われるなら次はいやよ。
この歌のような縛られた人生なんて」
私がそう言うと、
レイナは指先ぴくっとさせ
歌うのを止めた。
バタンとピアノを閉じ
「マリアにはミドルがいるんだから
そんなの読む必要ないでしょう!」
と少し感情的に言った。
レイナはミドルのことが好き
「あんなにかっこよくて強くて
優しくて姫を思っている人
他にはいないでしょ!」
ミドルは私と居るより
ミドルを好きでいるレイナといる方がお似合いなのでは…
ミドルはレイナを好きになった方が幸せなのではないのか…
「私だってミドルのこと」
でもそれをミドルに言うのは
私がほかの人に「ミドルとお似合い」
って言われることと同じ…
「ミドルは違うのよ…
ミドルって、犬みたいじゃない…?」
だから、言ってはいけない。
「だーれーが 犬だって」
扉にはミドルが居た。
「ち、ちがうの ミドル
ミドルは柴犬じゃなくて シェパードよ」
レイナが動揺しながら言う
「なんで私の部屋に来るのよ」
「僕も衛兵に呼ばれたんだよ」
「ミドル 私がももし着替え中だったらどうするのよ」
「…」
少しからかったつもりが
ミドルは本気にして顔を真っ赤にさせる。
「赤くなってんじゃないわよ スケベ」
「と、とにかく ぼくが 今日言いたいのは
僕を男として見てくれていないのはわかっているってことと
明日の大会で優勝して
かっこいいところ見せるからねってこと」
相変わらず恥ずかしい事を真顔で言ってくる
ミドルがレイナを引っ張り外に出て行く。
「ちょっと待ってよミドル離して」
「じゃあお休み」
そう言うと扉を閉めて出て行った。
「待って まだマリアと…」
「ダメだよ 明日の準備とかもあるんだから」
二人の声が扉の外で徐々に遠ざかる
鎮魂祭。
バカみたいと思っていても私には何かを変える勇気がない。
小説のような恋がしたいと思っていても
人の為と言い聞かせ諦めるしかないんだ。
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筆者が泣いて喜びます。
⚫︎最恐オーガは他種族女子と仲良くなりたい 完結済
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他種族の接触が禁じられた世界
最恐のオーグンが他種族の女の子と仲良くなりたくて人間の王子と旅をする物語です。
お馬鹿で変態だけど純粋なオーグンの冒険を覗いてみてください。