30話 決戦
壊滅した魔人の村
「おいおい、これじゃどっちが悪か分からなくなってきたぜ…」
僕はライルに掴みかかった。
「盗賊風情が善悪をかたるんじゃねぇ!」
「王国の犬コロが
てめぇの価値観で世の中差別してんじゃねぇ!」
ライルも掴み返す
「やめてよミドル…二人とも」
レイナが止めにかかる。
「ミドル、これからどうすんだ?
お前本当にあの化物を倒す気なのか?」
アルさんが冷静に問いかけてくる
「当たり前だ!」
「レイナは?」
「私はミドルについてくわ」
「……」
アルさんはじっとライルを見つめる。
「なんだよ、お前、俺の意見なんか聞いてもしょうがねぇんだろ」
「ああ、そうだ、お前は俺には関係ない…
俺は降りる
ミドル、時には曲げられない信念もあるだろうが俺にとってはそれが命だ。
熱くなって暴走して死んだんじゃ洒落にならねぇぞ
レイナ、あの事はすまなかったと思っている。
だが、それを脅しとして使うなら暴露するなり好きにするが良い、もう俺は宮殿には帰らない
ライル、二人の弟子を頼んだぞ」
そう言うとアルさんは茂みの中に消えていった。
3人になってしまった。
「ミドル、どうすんだ?
ただでさえ勝てる戦いでは無かったのに
あのデブがいねぇと絶望的だぞ」
「じゃあお前も抜けるか?ライル?」
鋭い視線を向ける
「そんなこと言ってねぇだろ
俺はお前の浪漫にかけたんだ
がっかりさせるなよ」
「…どうしたら勝てる?」
「良いかミドル、熱血勝負じゃねえんだから熱くなったって勝てるわけじゃねぇ
圧倒的な戦力差を覆すには相手に力を出させない事だ」
「不意打ち?」
「ああ、それもそうだ
だが、あの瞬間移動に固さ
例え寝床に入り込めたとしても倒せないだろう
原状は魔王に対して行動を縛ることも出来なければ
倒す術すら無い」
「そう言えばこの剣で切りかかった時は避けていた
でも、それこそ寝込みだとしても当たる気がしない」
「そうだようやく冷静になったか
その剣を避けるのか
全くの無策って訳ではないかもな…」
僕たちはライルの作戦の準備をし
指定された荒地に向かった
そこには何も無いただの荒地だった。
準備を整え、魔王が残した魔道具を荒地の真ん中で打ち上げる。
まず第一の要素。
魔王の現れる場所
そもそも罠を嵌めるのに確実な方法は無い。
でも、確立を上げることは出来る。
「そんなに我に殺されたのか」
魔王が現れた。
荒地の真ん中に。
僕らと向かい合う形で。
「姫は…どこだ?」
「マリアは来ない。
彼女の意思だ。
我も貴様らに用はない」
今だ。
ライルが罠の紐を引っ張ると
パン!と小規模の爆発が起こった。
ライルの手持ちの火薬と村にあった金属片を混ぜ込んだ物
少量とはいえ、辺りには粉塵が舞う。
「こんなんで我を倒せると思っているのか…ん?」
魔王の動きが止まる。
その瞬間に僕とライルが切りかかり
レイナは弓を放った。
僕の剣とライルの剣を手で止め
レイナの矢は魔王の胸に刺さった。
が、魔王は手に傷を負っただけ。
レイナの矢も表面を傷付けただけだった。
「勇者…貴様…退魔の剣を粉塵にしたのか?」
作戦は決まった。
想定外…
いや、想定外という奇跡に賭けたが
結果は想定内だった。
退魔の剣
この剣が魔王に対してどのような効果なのか。
おそらくは名前通り魔王の魔力を無視し有効な斬撃が出来る。
だが、もしかしたらこの剣の素材を少量魔王に擦り込めるだけで魔王の力を全て封じれるのでは無いかという淡い期待。
結果は想像通り。
粉塵が身体に接触している間は魔法が使えないだけ
その状態の攻撃は魔王に軽い傷を負わせただけ。
それだけの力しか無かった。
魔王は身体についた粉塵をパッパッと振り払うと
「小賢しい」
というと真っ暗闇の球を作った。
ああ、死ぬんだ。
僕は目を閉じた
「バベルやめて」
こんな時にも僕を救ってくれた女神の声が聞こえてしまう。
いつかと同じ僕の命を救ってくれた姫の声。
「ミドル!あんたもいい加減にしなさい!」
目を開けると本当に姫は居た。




