3話 ミドル
王宮の中庭
壮麗な広場で、美しい庭園が咲き誇る場所。
高い城壁に囲まれ、立派な門がその入口を守っている。
優雅な噴水と立派な銅像が設けられ、その水しぶきが日差しの中で輝いている。
噴水の周りには色とりどりの花々が咲き、美しい香りが漂っている。
まるで絵画のような美しい風景を作り出している。
「姫ー!怪我治して!」
聞きなれた声がする。
王宮の騎士のミドルだ。
彼は私と同い年。
数年前盗賊として襲ってきた一味の子供。
一味は全員、護衛の騎士によって壊滅させられたが
私と同い年だった彼が殺されるのを見て居られなかった。
それ以来、王宮の騎士見習いとして住み着いた。
「まったく またすぐ無茶して、
これからはもう魔法使えなくなるのよ」
ミドルが勇者の第一候補。
盗賊の生まれなのは城下の人達も知っているが、
それでも、市民からの人望の厚さが、彼の献身と人柄を表している。
「姫に直してもらいたいから…
いや、姫と同じ時間を過ごせるから、
僕は怪我をするのかも」
と恥ずかしいことを平気で言ってくるような男。
「ちょっと いい加減にしないと怒るわよ。
私の魔法はミドルのためじゃなくて、
みんなの為にあるのよ!」
ミドルの怪我した腕に手を当てると、
ポワッと薄っすら光り輝き、
ミドルの切り傷は塞がっていく。
王女の私だけの魔法。
軽い傷位なら手を当て、集中すると魔法が発動して治る。
他にもほとんど使うことが無いが、火の玉を飛ばしたり、水を飛ばしたり
色々と想像した通りのことが魔法で現実になる。
「僕はいつだって本気さ」
「はいはい…」
「たとえ魔法が使えなくなっても、
これからは僕が守るから。
絶対に優勝するからね。
しっかり見てて」
本当はわかっている…
ミドルが私に本気ってこと。
魔王を復活させてはいけないこと。
私は… そのために生まれてきたってこと。
ミドルも分かっている。
だから 真っすぐなミドルに答えられない私って…
ひねくれてるのかな…
自室への帰り道後ろに気配を感じ、
振り返るとミドルがついてきていた。
「ちょっと いつまでついてくる気」
「今は姫の護衛ですから」
「捧げよ 捧げよ 力を捧げよ」
「誓おう 誓おう 愛を誓おう」
「天より授かりこの御霊」
「古の誓いの前にて示せ」
「心の指に刻む永遠の証」
「二つは和となり一つとなる」
「神の恵みと命に係わるすべての方達にに敬意を表し
私達の糧になることを感謝します」
夕食の時間
広く煌びやかな王宮の中で
私たちの食事は祈りを捧げ、
国王のお父さまとお母さまと三人で食べる。
周りをミドルを含めた騎士や
淑女が大きなテーブルを囲む。
「御命頂きます」
父上の威厳のある祈り
「頂きます」
父上はデレッっと今までの威厳のある表情を一変し、
母上に抱き付く。
「ママー あーんして」
「もー しかたないわねぇー」
母上もまんざらでも無いように父上に応える。
毎回これだから流石に慣れたが、
私は複雑な気持ちだ。
父上と母上も現在、勇者と王女。
母はもう魔力を使ってしまい魔法が使えない。
富と名声が欲しくて勇者になりたがるような父上ではないだろうが
恋愛結婚ではないはず、
ここまでラブラブ出来ているのは何故なのだろう。
でも、なぜか羨ましいと思えない。
父上は私のほうを見ると。
きりっと威厳のある表情に戻し、
「マリアよ 鎮魂祭はこの国にとって一番大事な日だ」
私の運命は決まっている。
私の魔力は全て魔王の封印を更新するために使われる。
そのための命
「わかっているな」
父上の威厳のある表情に背中は冷や汗をかく。
しかし、表情は崩してはならない。
ぐっと堪え、
「わかっております」
「よろしい。
ミドルよ」
父上は珍しく私の隣に立つミドルに視線を向ける。
ミドルも額に冷や汗をかいている。
元盗賊なのを一番気にしていたのは父上だ。
ミドルも父上には良い思い出は無いはず。
「は、はっ」
「貴様が盗賊なのは周知の事実。
それでも城下の者はお前を好いておる。
誰にでも出来る事ではない。
お前が私の後を継ぐにふさわしいと思っておる。
明日の鎮魂債に優勝し、姫の夫を自ら勝ち取って見せよ」
「あ、ありがたきお言葉」
ミドルは少し震えながら俯き答える。
こうして夜の晩餐会は終わった。
「マリア、後で私の部屋に来てくれるかしら」
「は、はい、お母さま」
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筆者が泣いて喜びます。
⚫︎最恐オーガは他種族女子と仲良くなりたい 完結済
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他種族の接触が禁じられた世界
最恐のオーグンが他種族の女の子と仲良くなりたくて人間の王子と旅をする物語です。
お馬鹿で変態だけど純粋なオーグンの冒険を覗いてみてください。