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囚われ姫は暴君魔王に救われる  作者: あいだのも
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27話 ふたり


ソフィアが死んだ。



ミドルに殺された。



魔王城の自室で瞼は開いたが

何もやる気が起きない。


もう一度瞼を閉じた



またソフィアが死んでいる光景


ミドルが血まみれで立っている光景


また瞼を開いた。

もう瞼を閉じたくない。


仕方なく身体を起こした。


ベッドに座る。


瞼を閉じていないのに

ソフィアが死んでいる


気付いたら呼吸を忘れていた。

とても苦しかった。

でも嫌では無かった。


他に苦しいことがあった方が

本当に嫌な事を忘れられる。


身体が苦しいほど精神は楽になる。


いっそのこと自分の身体を傷付けようかとも思ったけど止めた。

まだ私は冷静だ。


これからどうしようか。

ミドルには会いたくない。

バベルにもあまり会いたくない


人間界にも魔界にも居場所はない。


ソフィアの言葉が思い出された。

イリシアスは私を辛いことから逃がしてくれる。


私はイリシアスの元へ向かった。



イシリアスはいつも通り屋上の庭園に居た。

彼は私を見ると「マリアさん大丈夫?」と言った

「大丈夫ではないかもだけど…

ねぇイリシアス。

二人で…

二人だけで誰もいないどこかに住まない?」


そういうとイリシアスは驚いた顔をして

「僕は良いけど…本当にいいの?」

「うん…もう疲れちゃったんだ」

「分かった、直ぐ行くかい?」

「ええ…」


そう答えるとイリシアスは転移魔法を作り出した。


広がる湖畔、湖の水面には月の光が揺らめき、

周囲には青々とした草原が広がっている。

月明かりが森を照らし、微かな風が草原をなびかせている。

静寂の中に、湖と草原の美しい風景が広がっていた。


周りには人気が無ければ家も無い。

誰もいない二人だけの世界。


イリシアスが何か魔法を掛けてくれたのか

彼といる時は辛いことを忘れられた。


イリシアスは私を無にしてくれる

バベルと違って


時折バベルからなにか通信が入っているのか

ぴくっとイリシアスが反応するが全て無視してくれている。


「ねぇイリシアス

釣りしようよ」

「釣り?魚なんて釣ってどうするんだい?」

「何言ってるのよ食べるのよ」

「うげえぇ 魚を食べるのかい…?」

とイリシアスは嫌そうな顔をした


「全く、これだからあんたら兄弟は…

魚は煮込むと美味しいんだよ

ほら、この木の枝と…紐…針もないか」


「ほら、これでどう?」

イリシアスが手をかざすと、周囲のツタの繊維が編み込まれロープになり

地中の金属が集まって針になった


「すごい!本当に便利ね!」

それらを組み合わせ釣り竿を作った。


「マリアさん、魚を採りたいなら僕が採ろうか」


「何言ってるのよイリシアス!

釣るから良いのよ」

私はしゃがみ込み近くに居たバッタを捕えた。


「うひぃい…マリアさんよく虫なんて触れるね

そう言えばパーティの時虫を食べていたもんね…

僕には無理かも」

「何よだらしないわね

パーティのはただの反骨心よ!

ほら、付けてあげるから竿を貸しなさい」

イリシアスの竿にもバッタを付け

水辺に糸を垂らせた。


それからはただ水面を眺めるだけ


ただぼーっと

「イリシアス本当にここ魚いるの?」


「多分いるんじゃないのかな?

水のあるところには魚っているもんでしょう?」


「そんな訳ないでしょ!

魚だって住みやすい環境があるんだから」


「ふーん…僕が魔人だから理解できないのかな?」


「確かにイリシアスはどこでも生きていけそうだね」

魚には魚の、人には人の、私には私の生きていける環境がある。


魚が地上に出てきてはいけないように

私は魔人の世界で生きてはいけないのだろう。


かと言っても、人間の中でも魔力を持ったはみ出し者

適した環境が無いのなら誰にも関わらない所でひっそり暮らせば良い…


すると、竿にピクッと反応があった。

「来てる…来てるよ」

次に餌を突かれた瞬間

思いっきり竿を引き上げた


「か、かかった!

うぐぐ…ちょっと重すぎ…

イリシアス手伝って!」


「え、え、でも魔法は…」


「魔法じゃなくてこの竿を引くのよ

ほら、早くこっち来て

ちょっと…ちゃんと引くのよ」


「お、重い…」


「私より力無いんじゃないの!

魚も少し疲れてきたわね動きが鈍くなった

せーのであげるよ

せーのっ!」


上がってきた魚…

小魚を見て私たちは顔を見合わせて笑った。



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