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囚われの姫と暴君魔王──運命か、恋か  作者: あいだのも


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25/32

25話 マロンパイ




頭では分かっている。

これは断るべきだと。


おそらく今のバベルなら私が居なくなっても

人間を滅ぼすことは無いだろう。


そんなことより、人間の国に一度帰り

無事を伝え、イリシアスと過ごす方が安泰だと。


でも、なぜかバベルの事が放っておけない。

話しを聞いたからなのか

バベルと楽しい時間を過ごしたからなのか

なんだかんだバベルは誰も殺していない


私はバベルの願いに乗ってしまった。


連れていかれたのは人間の国の街

人目につかない所に転移した。


「数千年前の人間の店なんてあるわけないじゃん」


「いや、ある。

マリアも本当はあると思っているのだろう。」


私もリアナだったら残そうとはする。

でも、数千年前のこと

何百世代と受け継がれている訳がない。


石畳の小道が広がる森の中を歩くと、

突如として現れる美しい建物が現れた。


そこは先ほどバベルの過去に出てきた場所に非常によく似ていた。

もちろん、全く同じわけではない。

でも確かにある。


その建物はまるで大樹の幹から生えているようで、緑の葉が壁面に広がっている。

外観はまるで自然と一体化したようで、建物自体が生命を感じさせるような存在感があった。


「ほら、あっただろう」

バベルがそう言うと扉から人が出てきた。


私はとっさに顔を隠そうとしたが

バベルは察し、仮面を被せた。


出てきたのは小さな子供だった。

子供は私たちの顔を見ると

すぐに扉の中に戻り

「お母さん、お母さん、仮面の人が来たよ!」


すると、中から小太りの女性が出てきて

「まあ、お待ちしておりましたわ

さあ、どうぞ」

と店内に通した。


店内は外見以上に昔のままだった。


店内は大きな窓ガラスが多く、森の景色がどこからでも見渡せるようになっている。

天井は高く、木の梁がむき出しになっており、自然の素材感が漂う。

床には、丸太を使ったカウンターやテーブルが配置されており、その質感が温かみを感じる。


店員に通されるがまま、席に着いた。


他に客は居ない。

そう言えば、外には看板もメニューも無かった。


座っていると甘く香ばしい香りがしてきた。


バベルとは会話が無かった。

別れた後の男女が会ったらこうなるのだろうか


何か話したいとは思うが、会話が見つからなかった。


しばらくすると奥から店員さんがマロンパイを持って現れた。


「本当に来てくれるとはね…

ささ、お食べ」


「頂きます」

出されたマロンパイを食べると

口に広がる栗の香り、パイの甘さ

今まで食べたマロンパイ、

いや、スイーツの中でダントツで美味しかった。


「美味しい!」

「もちろんよ!」

というと小太りの店員さんは誇らしげに腕を腰に当てた。


バベルは…

食べるのを躊躇している。

自分から食べたいと言っていたのに


案外弱い所もあるんだ

と感心していると


「あら…

あなたは食べないの?」

そう店員さんが言うと


「うるせぇ 食べる!」

と言い、一口に口に放り込んだ。


一噛み

二噛み

三噛み

四噛み目に移ろうかという時に


ゴクンと飲み込んだ。


「どう?」

店員さんが聞くと


「普通だ」


「ちょっと、それはないでしょ!

私たちの為に作ってくれたのに

それにここのマロンパイは他のどこのスイーツより美味しいわよ!」

と言うと


「我はマリアのシチューが食べたい」

真っ直ぐ見つめてきた

「な、あんな不味い物作れないわよ

あんたが作ったんでしょ!」

バベルの視線に耐えられなくて目を逸らす


「仲が良いわね

ちょっと待ってなさい」

そう言うと店員さんは奥に戻り

古びた木箱を取り出した。


「王妃の先祖様には未来が見えるのかね」

そう言うとバベルの前に置いた。


うっすらと魔法…呪術が掛けられているその箱を

バベルが指でパッと払い、

開けると中には一枚の手紙が入っていた。


「リアナから?

何てかいてあるの?」

と聞くも

バベルはじっとその手紙を読み

ふっと笑うと

手紙を燃やした


「あ!私まだ読んでいないのに!

何て書いてあったの?」


「マリアよ、我はマリアが我の嫌いな処を知っている

数千年染みついた価値観だ

すぐに変えろと言われても出来ぬが変えて見せる

強さでの支配にも飽きた所だしな」


「何言ってんのよ」


「我はマリアが…」

と言いかけた所でバベルの表情が曇った


「どうしたの?」

「ソフィアが死んだ」



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