22話 デート対決
足湯で癒されている私たちと
癒しとは程遠いバベルが対面している異質な空間。
「お兄様、邪魔しないでください。
マリアさんが決めるって言ったのはお兄様ですよ」
「ええいうるさいぞ
マリア、貴様も何故イリシアスとばっかり遊んでいる?
我と遊ばぬ?誘わね?」
何故と言われても
「毎回イリシアスが誘ってくれるから
わざわざあんたと遊ぶほど暇じゃない
そもそも、何で私が誘わなきゃいけないの?」
「なっ!
貴様は遊びに誘われたらほいほいついていく
尻軽だったのか!」
「し、尻軽女!?
バベルあんた本当に嫌い!」
「お兄様、僕が誘ったのについてくるのは卑怯ですよ」
「イリシアス貴様誰に向かって卑怯だといっている!
そうだ、公平にマリアに決めてもらうぞ
これから1時間ずつマリアと過ごし
楽しくないと言われた方は大人しく帰るでどうだ!」
相変わらずの暴君…暴論
イリシアスも諦めたかのように
「わかりましたよ…
その代わり負けたら大人しく帰って下さいね」
「ああ、魔王に二言はない!
あと、その身を隠すベールはなしな」
バベルが目の前の空間をパッと払うと
「わあああ
イリシアス様!イリシアス様だぁああ!」
周りに居た人達に歓声が湧く
「あ…お兄様…折角隠していたのに…
仕方ない…じゃあ、僕が先ですね
行きましょマリアさん」
そう言うとイリシアスは優しく私の手を引いた。
「あ、イリシアス様だ!
いつもこの国の為にありがとう」
「イリシアス様これ持って行って」
一歩歩くたびに街の人から声を掛けられる。
イリシアスは国民からすごい人気だ。
「イリシアス様その人は人間何ですか」
「ああ
そうだよ、僕の大事な人さ」
「良かった!イリシアス様の大事な人なら安心ですね」
イリシアスは美しい笑顔で返す。
「…人が多いところは二人になれないね
こっちだ!」
イリシアスは私の手を引き狭い路地に入っていった。
「ごめんね…マリアさん、もっと色々観光とかしたかったんだけど」
狭い路地で二人して座る。
道中に親切な店主に持たされた出店の肉を食べる。
「いいよ、イリシアスが国の人にこんなに慕われているのを知れたから」
「でも、それは不本意さ…
上手く立ちまわってしまうからそうなってしまう」
「不本意だとしてもだよ。
イシリアスは何で私にかまってくれるの?」
「屋上での啖呵が痺れたんだ。
僕の痛いとこをついて来た。
マリアさんは私の風
マリアさんが僕を導いてくれる」
「でも、あの時の私は酔っぱらって…」
「だからさ、君は僕と同じように上手く生きて来た
でも、今、君はしっかり自分のやりたいように生きている
尊敬しているんだ」
「…やめてよ
そうだ!イリシアスはずっと旅をしてきたんでしょ?
温泉以外も面白いとこ無いの?」
そう言うとイリシアスは放浪していた時の話をしてくれた。
広大な海、巨大な生物
聞いていて飽きない話にあっという間に時間が流れた
「もう1時間経ってしまうね…戻ろうか」
バベルが待つところに戻ると
相変わらずバベルの周囲には誰一人として近づいていない。
「戻ったなマリア!
さあ、行くぞ」
そう言うとバベルはとっとと歩き出した。
「マリア何が食いたい?
我はイリシアスと違って貴様に好きな物を食べさせられるぞ」
聞きながらも私とバベルの距離がドンドン開いていく
とある長蛇の列がある出店の前で立ち止まり
「エルフィア温泉郷名物、ドラ・モッシュか…
おい店主!」
そう言うと、並んでいた者達は一斉に道を開けた。
「へ、へい魔王様…何か御用でしょうか…?」
「マリアに美味しいと言わせるやつを作れ!」
私はようやく人だかりの最後尾にたどり着くと
「何で魔王様がここにいるんだよ封印されていた筈だろう?」
「人間が封印を解いたらしいぞ」
「じゃあさっきイリシアス様と居た人間かよ
ちっ低俗な種族の人間は気持ちが悪いぜ」
と二人の魔人が陰口を言いながら
私に気付くとそそくさと逃げようとする。
その行先に黒い渦
「バベル!止めなさい!」
その瞬間陰口を言っていた者の首元でバベルの手が止まった。
「何故だ?この愚民どもはマリアの悪口も言ってたのだぞ?
そこの右後ろの赤い服の奴もだ、動いたら殺すぞ」
陰口を言った魔人達の顔が真っ青になっている。
「我がいない数千年の間に我の事忘れられていた様だから思い出させる必要がある」
「もういい!」
私はバベルの前に立ちふさがり
バベルん位向けて魔法で作った火の玉を放ったが
当たると何事も無かったかのように消え去った。
「そんな魔法で何になる?」
「あんたパーティで言った事何も覚えていないのね
私は自己中で見下し
気に入らないことがあると直ぐ殺す人なんて大嫌いなのよ」
そう言うとバベルは昔を思い出したかのような表情をし
「リアナ…」
と言った。
リアナ…私の大好きな小説の主人公
「もういいわ…やっぱりあんたにとって私は
先祖の代わりだったのね」
「ま、待てマリア…」
もういいや 帰ろう…
ここにいられる理由はバベルとの結婚
イリシアスと結婚する場合はどうなるんだろう…?
いや、イリシアスとならどうにでもなる気がする。
私が望めば
二人で誰も知らない場所で住むのも良いし
二人で浪人生活するのも良い
人間が心配ならイリシアスが勇者になればバベルから守ってくれる。
とりあえず、バベルとの事は無くなった。
だからここには居られない。
一時、バベルにドキドキしたがそれも
死の縁のドキドキと恋愛のドキドキを混同していただけ
私は彼にとって代わりでしかない
城に帰り、ソフィアに挨拶して帰ろう。
「イリシアス」
「マリアさんもう終わったの?」
「イリシアス、私の夫として人間の国で勇者になって
バベルから人間を守ってと言ったら嫌?」
イリシアスは少しビックリするも
ふっと笑い
「僕で兄様から守り切れるか分からないけど
マリアさんとそのような生活をするのも毎日が楽しそうだね」
「ありがとうイリシアスお陰で決心がついたわ」
「人間の国に帰るのかい?」
「うん、もうあいつの顔は見たくないから」
「分かった。城で準備するんだね
落ち着いたら今度はゆっくり旅行しよう」
そう言うと転移魔法で城に帰った。




