17話 成長と困惑
「イリシアス 貴様
我に殺されたいのか?」
バベルの手元に高密度に魔力を込めた黒い球が生まれた。
まるでブラックホールの様である。
「お兄様、僕は生まれて初めてあなたに勝ちたいと思いました」
イリシアスの身体がバベルと相反する様に真っ白く輝きだした。
バベルの魔力に満ちた黒い球とイリシアスの輝くような白いエネルギーが向かい合い
激しい戦いが始まった。
バベルはブラックホールのような球をイリシアスに向けて放った。
その球は空間を歪ませ、イリシアスの周りの空間を異次元に吸い込んでいく。
しかし、イリシアスは逃れることなく、
彼の身体がより一層白く輝くと黒い球は光にのまれ消失した。
両者の魔力が交差し、周囲の大気が震える。
その影響は遥か彼方まで広がっていった。
二人に近いから危険だとか、辺境にいるから安全とかいうレベルでは無い。
再びバベルはブラックホールのような塊を数個生み出す。
それに対し、イリシアスは手に光の剣を生み出した。
世界が変わる。
皆がそう思ったとき、バベルは塊を引っ込めた。
「マリアを娶るかは我が決める事ではない」
イリシアスも戦闘態勢を解いた。
「バベル様、変わりましたな
カッコよいですぞ」
ソフィアがそう言うとバベルはパーティに戻っていった。
イリシアスも
「変わったのは僕だけじゃ無いんだね」
ソフィアは小さな身体で私を支え
「この娘は不思議な娘じゃ
儂らと種族が違うってだけでは無く ですな」
「ですね…
ソフィアさん後は任せてもいいですか?」
そういうとイリシアスも城内に戻っていった。
目が覚めると自室に寝かされていた。
「ソフィア姉さん…パーティは?」
「終わったよ」
私はソフィアから事の説明を受けた。
毒が回ってからの記憶は曖昧だったが、
後で行動を聞くと顔から火が出るほど恥ずかしくなる。
「ふぁっふぁ お主が来てから皆がお主に振り回されてるな」
「ごめんな…」
「謝るでない!
楽しいんじゃ。
数千年生きていると、一年なんてアッという間
でも、ここ数日はここ千年より長く感じるわい」
ソフィアは笑いながら答えた。
「ソフィア姉さん…何でバベルは私が良いのかな?」
「先祖の事を気にしとるのか…」
私は少し間が空き頷いた。
「バベルは私を好きな人に似ているから
その人の代わりに私と結婚しようとしてるんじゃ無いかって思うの」
「あまり他の人を簡単に理解するようにするでない
なにもバベル様だけじゃない
イリシアス様もバベル様への初めての抵抗として
お主を好きと思っているかもしれん」
私は少し俯く
「当然の事じゃ
お主だって、もしバベル様を好くなら
自分の好きな小説の王子様だからかも知れんし
イリシアス様だって
横暴なバベル様から逃げられる相手だからかもしれん
全てが複雑に交じり合っているんじゃ
どれが正解不正解じゃない
どれも一部は正解で不正解でもあるんじゃ」
「難し過ぎるよ」
「そうじゃな、16歳のお主には酷かも知れんが
だからこそ、自分の判断を他の何かのせいにするな
儂だって未だに過去の決断を後悔するときもある」
ソフィアの言葉が身に染みる。
実体験なんだろうか…
「でも、儂らは過去じゃなくて、今を生きている
お主はまだ、いっぱい経験していっぱい失敗出来る。
幸せな悩みじゃよ」
徐々に小さくなり消えていく
彼女は寂しそうに見えた
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筆者が泣いて喜びます。
⚫︎最恐オーガは他種族女子と仲良くなりたい 完結済
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他種族の接触が禁じられた世界
最恐のオーグンが他種族の女の子と仲良くなりたくて人間の王子と旅をする物語です。
お馬鹿で変態だけど純粋なオーグンの冒険を覗いてみてください。




