14話 嵐の前後の静けさ
イリシアスはバベルを部屋へ運んだ。
ソフィアも駆けつけ、
小さい身体で私を力強く抱きしめた。
ザマザの死に際
数千年生きたであろう魔人の最後の言葉
彼の言葉が耳に残る。
イリシアスにも不可解な事はあるが、
彼に助けてもらった。
そしてバベルに。
ベッドに横たわるバベル…
愛らしくなり手を繋いでいたら
私も寝てしまっていた。
心配ではあったが、幸せのほうが勝っていた。
翌朝、バベルは目を覚ました。
「お兄様おはようございます」
すぐにイリシアスもやってきた。
「遅いぞ、イリシアス。
貴様も我をいたぶって喜んでいるのかと思ったぞ」
「何を言っているんですかお兄様
僕はお兄様の言葉が届いてから
月光浴を中断して直ぐに来ましたよ
ナイフェルの力が強かったんですよ」
「ああ、外は1秒も経っていないんだろう」
「とにかく、マリアさんが無事で良かった」
「あ、あんたが死んだら世界が平和になったのにね」
つい悪態をついてしまう。
こいつに似てしまったのか
「ようやく我に惚れたのか?」
「ばーか」
というと私は逃げるようにバベルの部屋を後にした。
昼頃には以前のバベルの姿に戻っていた。
大きな心情の変化があった。
彼を見るたび心臓が高鳴り、
心が踊るような気持ちになってしまう。
と同時に私は先代の代わりなのだろうとも思ってしまう…
この感情が何なのか分からない。
恋…ではないはず…
今までの私ではないようだ。
でも、何もないよりはずっといい。
今晩は魔王復活と私の歓迎パーティを開いてくれるそう。
昨日あんなことがあったのにと思ったが
城内の人は何があったか知らない。
むしろ幹部が2人居なくなったのに
城から見た外の風景は、いつも通り
豊かで活気に満ち、
美しい自然と繁栄する都市が調和している光景が広がっている。
人々の幸せと安らぎが息づいており、
城はその中心で誇り高く立ち続けている。
夕暮れ時、城内は使用人たちの活気ある動きで満ち溢れていた。
壁には美しい装飾が施され、
蝋燭の灯りが優雅な光を広げている。
使用人たちが、鮮やかな色合いの花々を手際よく飾り付けている。
花瓶に生けられた花々の香りが城内に華やかな雰囲気をもたらす。
部屋に戻り、パーティの準備をしていると
部屋の中にいきなりソフィアがにゅっと現れた。
「マリア、そんな恰好で行くつもりかい?
あんたも主役なんだから、もっとオシャレなドレスにするのじゃ」
するとソフィアはどこから取り出したのか
ドレスを取り出した。
上品さと清潔感を漂わせている、真っ白なシルクの生地
ドレスの裾には、豪華なレースが施されており、ふんわりと広がっている。
ドレス自体は否もつけがたいほどに美しい。
問題は胸元だ。
大きく、でも下品さは無い程度に開けた胸元は
私には明らかに大人びすぎている。
折角なので着てみたが、完全に衣装に着させられている。
「ソフィア姉さん、私にはこの衣装釣り合わないよ…」
「何言ってるんじゃ」
そう言うとソフィアは手をかざした。
髪は上品にまとめられ、顔には上品なメイクが施され、
耳元には輝くエレガントなイヤリングが付けられた。
魔人は自分の為にしか魔法を使わない。
そんなソフィアが魔法で着飾させてくれた。
確かに胸は寂しい感じがする。
でも、一部の欠点に目がいかないほど
幼過ぎず、私らしさを残した
程よく調和がとれた恰好になった。
これなら、恥ずかしくない。
「このイヤリングはうちに代々伝わるものじゃ
じゃが、わしは伝えることが出来なかった
重く考えんでくれ、着けて行ってくれぬか?」
「うん!」
私の目から涙がこぼれそうになったのを堪えた。
「…マリア気をつけるんじゃ
この城の淑女達は各村から選りすぐりの女性たちを集められている
王族との血縁を皆が望んで居る
そんななか、人間のお主がバベル様の婚約者となると
彼女らはどうなる?」
私は唾を飲み込んだ。
「何かあったらすぐ誰かを呼ぶんじゃ」
「良かった」と思ってくださったら
是非ブックマーク、★★★★★をお願いします。
筆者が泣いて喜びます。
⚫︎最恐オーガは他種族女子と仲良くなりたい 完結済
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他種族の接触が禁じられた世界
最恐のオーグンが他種族の女の子と仲良くなりたくて人間の王子と旅をする物語です。
お馬鹿で変態だけど純粋なオーグンの冒険を覗いてみてください。




