10話 ソフィアの陰謀
「良いか、まずは掃除じゃ
魔王様がお作りになった作品には手を触れず
ホコリ一つ残さしてはならぬぞ」
「え、でもこのガラクタ足の踏み場もないほど」
「口答えするんでない!」
「は、はい!」
バベルが見ている中、黙々と掃除をしてく。
「なぁ…」
「な、何よ、何見てるのよ…」
「こらぁあ!
魔王様とお話するでない」
どこから現れたのか、
ソフィアが身体に似合わぬ
俊敏な動きで私とバベルの前に立った。
「クソババァ、何でてめぇがそんな事決める!」
「わしの部下だからですぞ
さぁ、マリアよ次の仕事じゃついてくるがよい」
ソフィアが私の手を掴み
部屋の外に連れ出した。
そして、とある部屋に行くと
そこにはバベルがワープで使ったときの魔法陣があった。
「これは使った事があるな?」
「どこに行くんですか?」
「わしの領地じゃ
魔王様の世話だけが仕事では無いのでな」
そういうと魔法陣の中に入った。
「ほれ、早くいくぞ
この中ではぐれたら大変じゃからな」
私も魔法陣の中に入った。
初めの頃は自分の事で精一杯だったが、
こうして入ってみると異質
歪んだ時空、
時間と空間が揺れ動き、
異次元のエネルギーが充満している。
重力が逆転するかのような感覚に襲われ、
周囲の景色が歪み、
まるで水の中を泳いでいるような感じがした。
ワープが進むにつれて、
体が引っ張られるような感覚に襲われる。
まるで時空の渦に飲み込まれていくような錯覚を覚えた。
目眩やめまいが私を襲い、現実感を失っていく。
突如として歪んだ時空は消え去り、
私は新たな場所に姿を現した。
そこは人間の世界に似た農村風景だった…
おぇぇぇ
先ほどの歪みとのギャップで嘔吐してしまった。
「大丈夫じゃ、大抵は2,3回で慣れる
それより仕事じゃ」
ソフィアは私に構わずとっとと歩き出した。
私は気持ち悪さが抜けず
フラフラの足取りで何とかソフィアについていった。
私はソフィアに嫌われるのだろうか…
種族が違うからなのか…
バベルと普通に話しをしているからなのか…
私の事奴隷みたいに思っているのだろうか…
魔人の農村風景は喉かなものだった。
村は青々とした丘の上に位置しており、
周囲を森や川に囲まれている。
高い木々がそびえ立ち、
鳥のさえずりや小川のせせらぎが耳に心地よく響く。
村の家々は木や石で建てられ、
各家の前には花々が咲き乱れ、
鮮やかな色彩が村全体を華やかに彩っていた。
小道は石畳で舗装され、
村人たちが穏やかな表情で行き交っている。
ただ、彼らの私を見る目が明らかに異物を見る目だった。
「そ、ソフィア様、あれは、に、人間ですか…」
「ああ、そうじゃ、儂の部下じゃ、こき使うが良いぞ」
「マリアよ、儂の村も高齢化が進んでいてな
若い者がいない、手伝ってやるんじゃ」
「ま、魔法は使わないんですか?」
「我々は魔王様の様に際限ない魔力があるわけではない
体力と同じ、使えば減るんじゃ
だから日常生活ではほぼ魔力は使わないんじゃ
ほれ、さっさと手伝ってこんかい!」
と、魔法の杖で私を村人の元へ突き飛ばした。
村人も私も初めは困惑していた。
しかし、村の老人の手伝いをしていると
次第に打ち解け、あれ食べてみろ、これやってみろ
と色々と教えてくれた。
魔人も食べる。
魔人は魔力=生命力でもあり
魔王は魔力が巨大過ぎるため、
食べるのは必要ないらしい。
魔人は寿命が長い分生殖能力に乏しく
この村もかなりの年数子供が生まれて来ていないらしい。
だからなのか、ソフィアとは違い
私を孫や娘の様に可愛がってくれた。
私も嬉しくて出来る限り村人の為に頑張った。
怪我をした村人が居たら、積極的に魔法を使った。
「魔人は個人主義だからあまり人に魔法を使わないんじゃ
ありがたや…」ととても感謝してくれた。
日が落ち、
私はソフィアの家に泊る事になった。
村人の集落から少し離れた森の奥にある小道を進むと、
一軒の小さな家が現れる。
古びた木の枝や蔦に覆われ、
まるで自然と一体化しているかのように見える。
家の前には小さな庭が広がっており、
異国の薬草や不思議な花々が咲き乱れている。
家の内部は狭いながらも居心地の良い空間で、
本棚が壁に沿って立ち並び、
古い書物や魔法の杖が丁寧に保管されている。
なぜかそこにはバベルもいた。
「な、何であんたがいるのよ!?
居たなら手伝いなさいよ
あんたならすぐに終わるんでしょう?」
「何故我の高貴な魔法を下民に使わなくてはならぬのだ」
「下民だなんて…本当に酷いわね」
「貴様も王族ならそうだろう?
そんなことより、クソババァが何か貴様に吹き込まないかと思ってな」
「それはバベル様が愛した人間がいたとか
その人間にマリアが似ているとかかの…」
「お、おい!!
クソババァ、寿命を待たずして死にてぇのか」
「知っていました」
そう言うと、二人は目を丸くした
「当時の姫の手記が残っています」
「な、だったら何故魔王様の元におるんじゃ?」
「私が帰った所で国はバベルに滅ぼされてしまいます」
ソフィアはバベルを見て少し納得する
「でも、それではおぬしが犠牲となって国を守るというのか
自分より他人の命が大事だというのか」
「はい」
「魔人の我々には到底理解が出来ぬな…」
ソフィアは少し考え込み
「こんな暴君王でも悪いところばかりでは無い
たとえ代わりとなれど、嫌いや無関心よりは良い…」
「おい、ババァ黙って聞いてりゃ暴君だの…」
「だまらっしゃい!!」
ソフィアはは目を見開き、その声を発した。
見た目に似合わず彼女の声は雷のように響き、
周囲の空気が震えるほどの威厳があった。
その迫力にバベルですら一瞬たじろいだ。
「ちょうど魔王国は平和記念祭りじゃ
一緒にいくんじゃ
デートじゃああああ!」
で、デート…?
デートぉぉおお?




