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第五話 俺TUEEEE=異世界YOEEEEでは?

俺TUEEEEになりたいですか。

安心してください。チート転生すれば誰でも俺TUEEEEになれます。

だってチートと前世の記憶があれば油断しない限りほとんど敵なしですから。


ぶっちゃけ異世界の文明ヤバいんですよ。中世ヨーロッパ文明から一向に進みませんから。たいてい糞神共が文明衰退させてるんですけどね。

チート無双を見るために教会作って機械は教えに反するとか、どこぞのエ○ンの賜物ですか。

で、チート転生者が現れたらその教会は滅びます。まさに神々の悪戯といったところです。


つまり異世界YOEEEEせいで、俺TUEEEEが成立してしまうんです。何とかなりませんかね、このクソシステム。

ともあれ俺TUEEEEはできます。剣聖や賢者でなくてもチート転生すれば、どんなスキルも強くなります。ゲームでいう常に経験値アップ状態なんですよ。

まさにレベルアップ無限編です。


さて、チート転生して強くなったはいいですが、死ぬことだってあります。

その死亡原因をランキング形式で発表したいと思います。ただし時間の都合上、三位まで。

テレテレテレテレテテン。

第一位は自殺です。

あ、冗談ではなくマジです。じゃあ、なぜ自殺してしまう理由ですが、人間関係が主な原因ですね。自分は強くても他人からしたら人の皮を被った化け物みたいですから。

対策はとにかくコミ力です。それ以上でもそれ以下でもないです。


あ、もう時間ないんで二位と三位は同時に発表しますね。

二位は衰弱死。三位は戦死。以上です。

二位は寿命で瀕死になって死んで、三位は強者との誉ある死に方になります。

やば、もう時間押してきてるじゃん!


最後になるけど何事もコミ力大事ね!

一人でもいいから仲良い子作って、無双ムーブすればいいから!

もちろん常識ある範囲でね!

死ぬ時は世界も一緒だぜはやめてよほんと!

じゃあ記憶消すからあとは勝手にしろ!


レッツ異世界チート転生!



◇◇◇◇



それは理不尽の化身だ。対峙した瞬間から理解してしまった。どうしようもなく次元の違いにただ見つめることしか出来なかった。


「愚かな弱き者よ。貴様に一発だけチャンスをやろう」


圧倒的強者の余裕が言葉に表れていた。

しかし、それは彼にとって一本の細い希望の糸だ。負けるわけにはいかない。人類のため世界のため愛する妻のため愛剣を構える。


「こい! 弱き者!」


それはちっぽけな剣の残火だ。次世代に紡ぎ烈火へと変える一撃。名も無き英雄が託した勇気の一歩だ。


「うぉぉぉおおお!」


消えた残像。包まれる静寂。残るは折れた剣。滴る赤と紫の液体が混ざり合った。

やがて彼が残した物語は人々の心を灯した。魔王が支配する暗黒時代はその日を境に英雄時代が到来した。

漆黒を切り開き、全てを薙ぎ払う俺TUEEEE勇者が誕生するのもそんな時代だった。



◇◇◇◇



キーボードを叩く音が心地よく響く。

いつも通りの仕事に、ほんのり香るコーヒーに、通知(しんたく)の無茶ぶりに、今日も平和だとコーヒーを啜った。


「カマエル先輩、カマエル先輩」


「どうしたのかな、ハニエルちゃん」


「その、だ、大丈夫ッスか?」


度重なる通知(しんたく)にとうとう可笑しくなったカマエル。まるで営業スマイルを日夜続ける社畜のようだった。まぁ実際、社畜のような環境ではあるが。


「なに言ってるの。私はだだだだだ」


「先輩がバクった!?」


荒ぶるカマエルを揺すり必死に自我を戻そうとする。


「は!? 私は今まで何を……」


「よ、よかったッス。戻ったッス!」


「うーん、私、今まで何してた?」


「ニコニコで通知(しんたく)を捌いてたッス」


「マジかぁ。でもやってあるからいいっか……なわけあるか!」


終わらない通知(しんたく)の通知音にカマエルは机に突っ伏する。


「やめたい。仕事やめたい」


「やめてくださいマジでカマエル先輩がいなくなったらチート転生課どころか天界役所がなくなって変数世界に世界終焉(アポカリプス)きちゃうから」


カマエルの仕事量は通常の十倍以上も働いていた。傍から見ていた他の天使達は口々に揃えて言葉にする。

カマエルTUEEEEと。もちろん尊敬も皮肉も畏怖も歓喜も全ての感情が混ざった狂気そのものだ。


「カマエル先輩は仕事で十分俺TUEEEEしてるんッス。職場に先輩がいるから皆んな安心して仕事ができるんッスよ」


カマエルはむくりと顔を上げる。


「私TUEEEEじゃなくて職場YOEEEEでは?」


「ぐっ。否定できないのが辛いッスね」


「もうやだ。ルシファーが異動してから私にしわ寄せが来てるもん」


「ルシファー先輩、バリ凄かったッスからね。あの人いま何してるんでしょうね」


「異世界で魔王役やってるらしいよ。確か変数世界で十万以上の魔王役やってるみたい」


「もはや奴隷じゃないッスか、それ」


「本人は楽しいって言ってるからいいんじゃないかな」


ふと昨日のルシファーとのメールのやり取りを思い出す。


「そういえばチートでも迷える魂でもないのに自分の魂に傷をつけた人間がいたって言ってたな」


「え、あの神々すらボコボコにできるルシファー先輩を?」


「そうみたい。憑依体ならともかく魂に傷をつけるって結構ヤバいよ」


「うそ。人間って極稀に意味不明な可能性を叩き出すッスね」


全知全能の神すら予測できない変数世界の未知。神々が自分勝手にシナリオを創造したご都合世界とは違い、不安定でいつ崩壊してもおかしくない世界の魅力でもある。


「そうだね。ちなみにその人間が死んだあとにチート勇者がやってきて、俺TUEEEEムーブして異世界は平和になったとさ。チャンチャン」


「何か必死に頑張ってたのに酷くないッスか」


「ま、チートだからね。異世界にとって勇者はTUEEEEだから」


その後、勇者が讃えられ、ハーレム展開が開始されてヒロインといちゃラブ生活を送り、幸せハッピーエンド。

とここまで糞神の想定していたシナリオだった。


「でもその勇者を倒す英雄(みち)が現れたの」


「……え?」


「まるで外から来たウイルスを消すために世界が生み出した。そんな感じだったかな」


はっきりいって想定外だった。普段は自分のご都合世界で満足してる糞神達もこの時ばかりは驚愕し、ヨダレを垂らしてその世界を覗き込んでいた。


「異世界YOEEEではなく、異世界TUEEEEだ。私もこの時ばかりは歓喜して糞神にざまみろって思ったよ」


私も未知が好きだ。誰も展開が読めないからこそ心が踊りその物語を追いかけてしまう。どうしようもないくらいに。


「す、すごい。その変数世界は次なる……」


「ああ、それはないよ。その変数世界は滅んだから」


「……は?」


「勇者が死ぬ間際に世界も道連れだ、とか言い出して滅んだの」


「……」


ハニエルはその言葉の真意に気づいてしまった。普段なんかかんや穏やかなカマエルの瞳が暗く闇に塗りつぶされていく。


「その勇者を担当した私は監督責任者として後始末に追われることになったんだ」


「せ、先輩」


「うん、分かってる。でもせめて一つ言わせて。こんなこと誰も想定してないから。糞神共、変数世界の未知なめんな」


消えることのない炎は火柱に昇華し、のちに『大天使の襲撃事件』と呼ばれる糞神に殴り込む事件に発展した。

その後、主神や他の天使、まともな神々から抗議が殺到した結果、今までの実績もあって一週間の謹慎処分と二年間のゲーム転生課の業務を務めることになった。

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