第三話 TS転生はのじゃロリが至高だと思う
TS転生を知ってますか。
男が女に、女が男にと自身の体で欲望剥き出しになれるアレです。俺は心が男だから大丈夫だとタカをくくっていたら、ほぼメス堕ちしますので注意してください。
性という性に支配され、最終的に見た目も美少女、心も美少女になりますので、対策としましては早いとこ百合展開する方が男の尊厳が保てます。
時間がまだあるので一つお話をしましょう。
あるところにTS転生した迷える魂がいました。念願だった美少女になれて、美少女の体とチート能力を使い、男性達を弄ぼうとしたのです。しかし、ある男性にわからせられて一発でメス堕ちしました。
その後、迷える魂は男性の忠実な【規制音】になりまして、人生の幕を下ろしたのでした。
女性の体は敏感です。男性の時よりも発達しており、一度堕ちれば底なし沼のように抜け出せません。まぁ私は一度も体験したことないので、見たものしか伝えれませんが。
あ、ロールプレイするのも手です。
儂は男じゃ、みたいなのじゃロリだったり、僕は女だよ、みたいなボクっ娘とか演じれば長いこと持ちます。キャラ付けですね。
尊厳も保てて同性からもちやほやされるので、一石二鳥ですね。
まぁミスったら堕ちますけど。
さてさて。もう一度確認します。
本当にTS転生するんですか?
私はやめといた方がいいと思うんだけど。
まぁあなたがいいって言うなら糞神に伝えておくけど。
え、先に転生の間にいった親友は男性のままにしてほしい? え、まさかホモ……こほん。
分かった。そこまで言うならあなたの恋路は邪魔しない。けど一つ忠告しとくよ。あなたが恋をしていてもその恋が必ず成熟するか分からない。
定められた運命を歩むと思っているならそれこそTSの冒涜ってやつだよ。
じゃあここの記憶は消しておくね。あなたの恋路に幸あらんことを。
レッツ異世界チート転生!
◇◇◇◇
真っ暗な世界でゆっくりと意識が形になっていく。ふとそれが当たり前だったかのように目を開けた。
「お、ようやく目が覚めたか」
見知らぬ赤髪の少女がこちらに笑顔を向ける。
「心配したんだぞ。俺という者がいながら一時間もずっと寝てるんだから」
一時間? 俺はこの子の前で寝ていたのか。
「拓斗、そろそろ起きろ。こっちは膝枕してまで介護してたんだぞ」
え、なんで俺の名前知ってるのと口にしようとしたが、彼女が先に言葉にした。
「どうやら俺たち転生しちまったらしくてな。まぁ俺はお前と入れるならどうだっていいが」
「……転生? いや待て。それよりお前は誰だ?」
「おいおい。親友の顔を忘れちまったか? 俺だよ。真二だよ」
「え、いや、真二は男の……ふご!?」
真二と呼ばれた少女は無二の親友に首絞めを仕掛けて語り出す。
「これで分かっただろ!?」
「む、む、胸が! 当たってる!」
メロンのようにたわわに実った二つの果実は男子高校生に刺激的でとても耐えられたものではない。
「分かった! 信じるから離してくれ!」
それから真二は事の経緯を話し出す。まず俺らは異世界へと転生したらしい。車に轢かれて事故死したと思っていたが、神様がいうには手違いで死んでしまったそうだ。お詫びに異世界で第二の人生を始める権利をくれた。
だが、俺が一番気になったのはそこではない。
なぜ親友が女になってしまったのかだ。
「何か手違いらしいぞ」
マジかよ。神様、手違いしすぎだろ。
あと胸でがいし俺好みの顔だしもう狙ってるとしか思えないんだが。
「ま、体は女でも俺達は親友だ!」
真二は無邪気に俺と肩を組む。そうだ。真二の心は小さい頃から変わってない。唯一無二の友情を誓った親友を欲望のまま襲ってはいけない。
「そうだな。たとえ女でも俺達は親友だ!」
「おう! しっかり守ってくれよ!」
腕に抱きつく親友と二つの欲望の塊に必死に堪えながら俺達は異世界で冒険することにしたのだった。
◇◇◇◇
「カマエル先輩」
「なに。いま肉焼いてそれどころじゃないんだけど」
仕事が終わり。焼肉を奢ると豪語していたハニエルと一緒に日本の焼肉店へと来ていた。
焼いて一皿食べ終わる前に追加注文し、また焼いて食べて注文する過程はもはや食べるプロと言って差支えがないだろう。
「先月にTS転生した少年がいたじゃないッスか」
「知らない。覚えてない。今は焼肉第一だ」
「聞いてくださいよ。なんかそのTSっ子、最初からメス堕ちしてたらしくて」
「うん、それで?」
「転生初日に親友っ子とヤったらしいッス」
じゅーと肉が焼ける音と共にホルモンがするりと箸から落ちる。私はビール片手にゴクリと飲み干して話の続きを聞くことにした。
「で、親友の子は罪悪感からTSっ子と距離を置いて破綻したッス」
「酒が不味くなる話やめてくれない?」
「ここから面白くなるんで聞いてくださいよ」
「嫌な予感しかしないんだけど」
「まあまあ。それでTSっ子は親友っ子を手に入れるためメス堕ちから闇堕ちして、彼が望む世界を作り上げようと魔王になったんッスよ」
「待って。話が飛躍し過ぎてない?」
「まぁ多少割愛はしてるッス。あんまり説明すると肉が焦げちゃうッスから」
それからハニエルが語り出したTSっ子と親友の物語。
魔王になったTSっ子を止めるため親友っ子は勇者となり、聖剣を持って立ち向かった。
友情と恋情、羨望と堕落、誓いと願い、世界と親友、やがて二人は終わぬ戦いに身を投じ、朝と夜の境界線を超えて血で血を洗い続けた。
しかし、生物には終わりがあるように彼らもまた終わりを迎えた。
「で、勝ったのは親友っ子ッス。負けたTSっ子は彼の腕に抱かれて最期に『君が好きだ』って告げて息を引き取ったんッスよ」
「……まさかそれで終わり?」
「いいえ、親友っ子は『俺も好きだ親友ではなく恋人として』と言って口付けしたんッスよ。もう涙なしに見れなくて、この物語をつくった先輩に感謝したくって……ぐす」
酔ったせいなのか、ハニエルの涙腺は金魚すくいのぽい並に脆くなっていた。
「私がつくったんじゃない。彼らが自ら歩んだ運命だよ」
「ぐす……それでも両思いだった二人が、最後の最後で結ばれたのは先輩のおかげッスよ」
「……え、両思いだったの?」
「そうッスよ。ぐす、あの二人実は転生する前からお互い好きだったみたいで。もし好きじゃなかったら初日からヤってませんよ普通」
途端、カマエルは俯いた。
暗い夜を纏わせて大天使はただ一言だけ口にする。
「二人とも最初からホモだったのかよ」