ひまわり畑
気がつくと私は、私より背丈が高いひまわりが咲き誇ってる場所に立っていた。
此処はひまわり畑か?
私……私は誰だろう?
名前も年齢も何もかも思い出せない。
上着のポケットにもズボンのポケットにも何も入ってなかった。
取り敢えずひまわり畑から出ようと太陽に背を向けて歩き出す。
行けども行けどもひまわり畑から抜け出せない。
咲いているひまわりの中には沢山の種を抱えている物もあるのだが、何故か刈り入れはされていない。
お蔭で私は食事にありつけた。
刈り入れされていないひまわりの種を見つけては、上着やズボンのポケットをひまわりの種で満たす。
ひまわり畑の中を進みながら、ポケットの中の種を一粒ずつ取り出し食べる。
カリ、ペッ。
カリ、ペッ。
時計を持っていないので正確な時間は分からない、だけど5〜6時間は歩いてると思うのだがまだ道に出ない。
ひまわりの種で腹は満たされた、でも、喉が渇いた。
咲き誇るひまわりの向こうに川が見える。
川幅が1メートル程ある川の先には道路も見えた。
川の水は濁りも無く澄んでいて飲んでも大丈夫そうだ。
ひまわり畑でもそうだったが川の中も昆虫等の姿は見当たら無い。
川に近寄り膝をついて両手で水を掬い飲む。
川を飛び越え道路、アスファルトで舗装された道路に出る。
左右に一直線に何処までも延びている道路。
道路を挟むように川があり、その道路と川を挟んでひまわりが咲き誇っていた。
見渡す限りのひまわり畑。
人の姿は見えない。
私は人の姿を求めて、沈みかけている太陽に背を向け道路上を歩く。
太陽が沈むと真っ暗なのでその場で腰を下ろし横たわり眠る。
朝になり太陽が登ると道路を歩く、川の水で喉を潤しひまわりの種を食べながら。
カリ、ペッ。
カリ、ペッ。
幾日も幾日も歩くが人の姿は何処にも見当たらない。
何故だ? 何故?
人がいないんだ?
十字路に行き当たった。
東西南北にひまわり畑を割いて何処までも一直線に延びる道路。
道路を挟んで川も東西南北に2本ずつ延びている。
どの方向にも人の姿は無い。
何故だ、幾日も歩いているのに何故人がいないんだ?
私は夢を見ているのか?
分からない、分からない。
途方にくれながらも私は、歩いて来た方向に向けて歩き続ける。
人に出会えるまで歩き続けようと、何処までも何処までも歩き続けた。




