怪獣、東京に現る
ジャンル:パニック
怪獣ボコボコーンが東京に接近しています!
付近にお住いの方は危険ですので、怪獣に近づかないでください!
お台場にて。
『ご覧ください。
怪獣ボコボコーンを一目見ようと、
大勢の見物人が押し寄せています。
ただいま警察が封鎖措置を取っています!』
必死に訴えるリポーター。
その後ろには、ひと目怪獣を見ようと集まって来た人々が映し出されている。
「ねぇ、この人たち大丈夫なの⁉
危ないよ⁉」
テレビを見ながらマモルが心配そうに言う。
6歳になったばかりの彼でも、見物人たちのしていることがいかに危険か分かる。
だと言うのに……いい大人たちが何をしているのか。
彼らはスマホを手に、ぱしゃぱしゃと写真を撮っていた。
どうせSNSに投稿していいね稼ぎをしようと思っているのだろう。
もしくは動画サイトに投稿して再生数を稼いで一儲けしようという魂胆か。
なんにせよ、あまり褒められた行為でないことは確かだ。
俺は息子のマモルを膝の上に座らせ、二人でじっとテレビを見る。
「本当に好きよねぇ。
男の人ってなんで怪獣なんかに夢中になるのかしら」
キッチンから妻の声が聞こえる。
「怪獣はな、男のロマンなんだよ」
「ロマンならアナタたちも見に行けばいいのに」
「馬鹿を言え、あんな危険な場所へマモルを連れて行けるか!」
「ふふっ、そう言う人だから結婚しようって思ったのよね」
妻が笑う。
ちょっとだけ照れくさくなった。
「パパー! ボコボコーンが映ってるよ!」
「本当か?!」
テレビには”あの”ボコボコーンが映っていた。
『ご覧ください! ボコボコーンが道路を歩いています!
機動隊が見物人が近づかないようにしています!
みなさん! 危ないから押さないでください!』
必死にリポーターが呼びかけるが、野次馬たちは全く引かない。
せっかく現れたボコボコーンを映そうと、必死にスマホを掲げている。
ボコボコーンは地球に数十匹しかいない貴重な怪獣だ。
身長3メートル。
体重は200キロを超える。
ボコボコーンは地球のあちこちを放浪し、好き勝手に歩き回る。
そのため人が住む地域にも姿を現すのだが、あまりに珍しいために見物人が押しかけて非常に危険なのだ。
もしボコボコーンに何かあったら、彼らはどうするつもりなのか?
ボコボコーンは草食性で非常に大人しい。
しかし、見た目はいかにも戦いを好みそうなごっついフォルム。
男心をこの上なくくすぐるのである。
「ボコボコーンかっこいい!」
テレビの前で目を輝かせるマモル。
俺はこいつを守るヒーローになりたいと、心から願う。