同窓会、彼はホストになっていた
ジャンル:ヒューマンドラマ
「ミキ、久しぶりー」
「アヤカ、変わってないー!」
「コウスケ相変わらずだなー!」
「お前こそー!」
高校の同窓会。
何年も顔を合わせていなかった者たちは再会を喜んでいた。
中には抱き合いながら涙する人もいた。
あれからかなりの年月が経ち、みな年を取った。
それでもかつての面影が失われることはなく、お互いの顔を見ては昔懐かしさに浸るのである。
一同は予約していた居酒屋へと向かい、酒を飲みかわしながら思い出話に花を咲かせる。
「そう言えばさぁ……崎田は来てるの?」
一人の男がある人物の名前を挙げる。
崎田は地味で目立たない人だった。
休み時間は教室にいなかったし、昼休みは一人で弁当を食べていたらしい。
崎田のことを思い出そうとする一同。
しかし、これと言った話題は上がらなかった。
「そう言えば誰か呼んだの?」
「いや……」
どうやら崎田は誘われなかったらしい。
「あのさぁ、崎田がどうなったのか、俺知ってるんだよね」
おもむろに一人の男がスマホを取り出す。
「え? え? どうなったの?」
「ほら……これ」
「えええええええええ⁉」
スマホの画面を見た女性は驚愕のあまり大声を上げた。
「え? え? どうなってるの?」
「ミキも見てごらんよ!」
「どれどれ……えっ? えええええええええええ⁉」
スマホを見てやはり驚いている。
興味を惹かれた一同は次から次へとスマホの画面を見せてもらい、やはり驚いて大げさなリアクションをしていた。
「マジかよ……」
「信じらんない!」
「崎田の奴、仕事を辞めてからホストになったんだってよ。
俺も最近知ったんだけどさぁ……」
「それにしても思い切ったことするよなぁ」
「ああ……」
崎田の変わりようを目の当たりにしたことで、しんみりした空気が広がって行く。
「離婚したって聞いたけど……やっぱりそれが原因なのかな?」
「そうじゃねぇかなぁ。
教師辞めてホストとか、何考えてるのか分からねーよな。
しかもホストになったの俺たちが卒業してすぐ後だってよ」
「「「ええええええっ⁉」」」
スマホの画面に映っているのは初老の男性。
若い男たちと一緒にピースサインをしている。
その笑顔はあまりに幸せそうであった。