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ざまぁってなんだろうって考えながら書いた婚約破棄のようなコメディみたいな何か

ジャンル:コメディ

今回はオチとか叙述トリックとか特になくて、勢いで読める婚約破棄のパロディ的な作品です。

どうぞ最後まで下らないノリのお話をお楽しみください。

「貴様との婚約を破棄する!」


 声高らかに宣言する王太子。

 その傍らにはぴったりと寄り添う庶民上がりの女。


 婚約破棄を言い渡された悪役令嬢は眉一つ動かさず、泰然自若とした態度で二人を見据えている。


 貴族たちが集うパーティー。

 楽し気な空気が一変して緊張が走る。


「……左様ですか」


 悪役令嬢は全く動じず、王太子の言葉を受け入れる。


「そうだ!

 貴様との婚約は破棄させてもらうからな!」

「それはもう聞きました。

 ……で? だからなんなのでしょう?」

「え?」


 全く動じない悪役令嬢。

 婚約破棄を宣言する王太子に、だから何だと質問する。


 さすがにこの展開を予想していなかった王太子は、悪役令嬢の態度に狼狽を隠せない。


「いや……その……だから……婚約破棄」

「で?」

「で? じゃなくて……さぁ。

 その。あるじゃん」

「なにが?」

「『なんで⁉』とか『どうして⁉』とか。

 そういう反応がさぁ」


 モジモジする王太子。

 彼の望みを理解した悪役令嬢は、肩をすくめてやれやれと頭を振る。


「なるほど、理解しましたわ。

 わたくしに理由を尋ねて欲しいのですね?」

「まっ……まぁ……そんなところだ」

「では、お尋ねします。

 どうしてわたくしとの婚約を破棄なさるのですか?」

「それはだなぁ」


 待ってましたと言わんばかりに話し始める王太子。


 曰く。

 悪役令嬢は取り巻きを引き連れ、連日のように女(王太子の隣にいる人)の元へ押しかけて、いじわるをしたというのだ。

 そんな女(悪役令嬢)とは一緒になれない。

 婚約を破棄する。


 彼の話を聞いていた悪役令嬢だったが、最後まで聞き終えたところで大きなため息をついた。


「はぁぁぁぁぁ! そんなことで!

 婚約破棄! 笑わせてくれますわ」

「なっ……なんだと⁉」

「確かにわたくしはその女に意地悪をしました。

 階段から突き落としたり、毒を盛ったり、暗殺者を差し向けたり」

「「ええっ⁉」」


 自覚がないのか、女は王太子と一緒に驚いていた。


「けれども彼女はそれらの企みをことごとく乗り切り、

 見事にこうして晴れ舞台を迎えたのです。

 心から祝福しますわ。

 おめでとうございます」

「「ええっ……」」


 悪役令嬢の意味不明な態度に、二人ともドン引きする。

 意味が分からない。


「ですが」


 悪役令嬢はきりっとした目つきで王太子を睨む。


「だからと言って、婚約破棄をするなど、

 一国の王子がしていいことではありませんね」

「なんで⁉」

「なんで? ですって?

 笑わせてくれますわね。

 私たちの婚約はいわば国政。

 アナタ一人で勝手に決められることではありません。

 誰かにこの話を通したのでしょうか?」

「いや……その……」


 目を泳がせる王太子。

 悪役令嬢はため息をつく。


「独断だったわけですね。

 やれやれ……ですわ」

「でっ……でも……お前はいじわるを……」

「だから?」

「え? え?」


 悪役令嬢の気迫に押され気味の王太子。

 なんの反論もできないでいる。


「わたくしがその女にいじわるをしいたところで、

 いったい何の問題になるというのでしょう?

 国政を混乱させてまで婚約破棄をする理由になると?」

「いや……その……なりません」

「ですよね?」


 悪役令嬢は勝ち誇ったように微笑む。


「では、撤回をお願い致します」

「いや……それは……その……」

「嫌です!」


 ここで黙っていた女がようやく口を開いた。


「私は彼を愛しているんです!

 だから……絶対に負けたりしません!」

「では、どうすると言うのですか?」

「決闘を申し込みます!」


 ざわっ……!

 彼女の言葉にオーディエンスが沸き立つ。


「わたくしと……決闘を?」

「はい! ここで戦っていただきます!

 アナタが負けたら私と彼との結婚を認めて下さい!」

「いいでしょう。決闘の内容は何にしますか?」

「『ざまぁ』対決です!」

「「「おおおおおおおおお!」」」


 ざまぁ対決と聞いて、オーディエンスはさらに盛り上がる。

 場は熱狂に包まれた。


「くくく……よろしい。

 その勝負、受けて立ちますわ!」

「じゃぁ、私から行くからね……」


 王太子の傍から離れ、一人悪役令嬢の元へと向かう女。

 二人は向き合い右手の拳を突き出して誓いを立てる。


「正々堂々『ざまぁ』することを――」

「――ここに誓いますわ」


 かくして決闘の火ぶたが切って落とされた。


 先に悪役令嬢が動き出した。


「食らいなさい! これがわたくしのざまぁ!

 必殺『炭鉱送り』ですわ!」

「ぐわあああああああああああ!」


 なぜか王太子の服が破れて身体が吹っ飛ぶ。

 彼の身体は真っ黒にすすけて煤まみれになってしまった。


「ろくに準備も根回しもしないで婚約破棄をした結果!

 哀れな王太子は地位を追われて炭鉱送りに!

 これで2万『ざまぁ』ですわ!」

「ぐぅ……! なかなかやるね!

 じゃぁ今度はこっちの番だよ!」


 女は両手を前に付きだし、呼吸を整える。

 そして――


「必殺! 『国家滅亡!』」


 彼女が宣言すると、グラグラと地面が揺れる。

 そのまま城が崩壊し、その場にいた全員が瓦礫に埋もれてしまった。


「聖女を追放した国はその加護を喪失!

 バリア的なものを失って城も街も崩壊する!」

「ふふふ……やりますわね」

「え⁉ まだ立っていられるの⁉」


 瓦礫の中から這い上がる悪役令嬢。

 この程度の『ざまぁ』で挫ける彼女ではない。


「何度も修羅場を通って来たこのわたくしが。

 国一つ崩壊したくらいでなんともありませんわ。

 あなた……聖女だったのですね」

「うん、皆には秘密にしていたけどね」

「だからわたくしのいじわるも切り抜けられた。

 ククク……そう言うことでしたのね」


 にやりと口端を釣り上げる悪役令嬢。

 女も楽しそうに微笑む。


「初めてだよ、ここまで骨のある令嬢さんは」

「今まで何人もの悪役令嬢を屠ったようですわね。

 でも……わたくしは他の量産型とは違いますの!

 唯一無二の悪役令嬢ですわ!

 聖女なんかに負けたりはしません」

「私だって負けないから!」


 崩壊した城の残骸の上で、二人の女が向かい合う。


 夜空には綺麗な満月が浮かび、星々が戦いの行く末を見守っていた。


「ぐっ……いったい何が起こって……」


 ずたずたのぼろ雑巾のような姿になった王太子。

 なにがなんだか全く分からない。


「最強の悪役令嬢と最強の聖女との戦い!

 ざまぁとざまぁがぶつかり合う史上最大の決戦!

 見逃せないぞ!」

「え? 誰っ⁉」

「俺は都合よく現れるヒーロー!

 第二王子的なあれだ!」

「初対面なんですけど⁉」


 一度も会ったことのない第二王子の存在に驚愕する王太子。

 確か自分は一人っ子のはずだったが……。


 いったい誰の息子なのか。


「行きますわよ!

 アナタはこの『ざまぁ』に耐えられまして⁉

 秘儀『辺境送り』!」

「ぐわあああああああああああ!」


 辺境へ吹っ飛ばされる王太子。

 彼は夜空の星になった。


「こっちだって負けてられない!

 奥義『天変地異』!」


 聖女の一言によって大地は割れ、火山が噴火。

 そして台風がやって来て気圧の変化で体調不良を引き起こす。


「ぐっ……低気圧で頭痛が!」

「ふふっ、ギブアップする?」

「まだまだですわ!」


 悪役令嬢と聖女との戦いは翌朝まで続き、王太子はあちこち吹っ飛ばされ、王国は徹底的に破壊されつくした。


 朝を迎える。


 何もかもが破壊された荒れ地。

 二人ともお互いの『ざまぁ』をしのぎ切って、生き延びることができた。


「どうやら引き分けのようですわね」

「そうだね……楽しかったよ!」

「ええ、わたくしも!」


 二人は手を取り合い、抱きしめあい、互いの健闘をたたえ合う。


「わたくし、本当はあなたと仲良くしたかったのですわ!」

「わたしも! ずっと友達になりたかった」


 互いにざまぁを乗り越えたことで、二人の間に友情が芽生えた。


 その後、聖女の力によって崩壊した国は元通りになり、悪役令嬢の卓越した政治手腕によって、人々は長い平和な時代を謳歌することができたのである。


 可哀そうな王太子はというと、炭鉱送りにされ、辺境送りにされ、人外にもみくちゃにされた結果、なんかいい感じに覚醒して魔王になった。


「くくく……悪役令嬢ぉ! 聖女ぉ!

 今度は俺が『ざまぁ』する番だぞ!

 首を洗って待っていろぉ!」


 魔王となった王太子は部下たちに出陣の号令をかける。

 こうして人間と魔族との長い闘いの時代が幕を開けるのであった。


「ふっ。俺の出番はまだまだ先のようだな」


 自称第二王子は自分の出番がいつになるのか、首を長くして待ってる。


 果たしてどうなる⁉

 魔王は見事に『ざまぁ』できるのか⁉


 つづく(続かない)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白~い!! すっごく笑えた!! 楽しかったーーー!! 悪役令嬢と聖女の友情に乾杯♪ そして、魔王のざまぁ、健闘を祈る♡
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