しもべよ、どこにいる
ジャンル:その他
真夜中の獣道。
ずんずん奥へと進んでいく。
確かこちらへマナブが歩いて行ったはず。
私のカンは間違いないのだ。
歩けども、歩けども。
マナブは見つからず。
どこまでも獣道が続いている。
(まずいな……このままでは夕ご飯が抜きになってしまう)
腹の減り具合から、そろそろ帰らないといけない時間だと気づく。
夕飯を逃したら朝までご飯が食べられない。
そんなのは嫌なのである。
自分よりも背の高い草をかき分けて進んでいくと、開けた場所に出た。
あたりからは虫の声が聞こえてくる。
どうやらここは人が集まる場所のようだ。
そこでマナブに呼びかける。
マナブよどこにいる。
私を一人で置いて行くな。
「おーい! おーい!」
マナブの声が聞こえた。
近くにいるのだろうか?
声のする方へ走っていくと、だんだん気配が近づいて来た。
この草むらを抜ければおそらくだがマナブがいる。
そう確信した私は一気に走り抜けた。
草むらを抜けたらゆっくりと彼の元へと歩いて行く。
「おいおい、こんな場所にいたのかい」
マナブは私を抱き上げる。
「ごめんな、寂しかっただろ?」
私が舌を出すと、マナブはやれやれと頭をふった。
「そろそろ帰ろうか。
ホタルが見られなかったのは残念だけど」
私はマナブと蛍を見に近所の雑木林までやって来たのだが、一匹も見つからなかった。
おばあちゃんが子供の頃はいっぱいいたと聞いていたんだけどな。
「私はお腹がすいた」
「そうだね。おばあちゃんが用意してくれたそうめんを食べようね」
「うん」
私よりもずっと背の高いマナブは、私の手を引いて一緒に歩いてくれた。