警部、事件です
ジャンル:推理
ある家で殺人事件が起こった。
一家が惨殺されたのだ。
妻はリビングで。
夫は浴室で。
姉は寝室。
弟は庭で。
それぞれ他殺体となって発見された。
彼らはみな一様に首を絞めて殺害されていた。
首に縄の後がしっかりと残っていたのだ。
「いったいどうやって四人も殺したんでしょうね」
刑事が庭でうつぶせに倒れる弟の死体を覗き込みながら言う。
「おそらく、食べ物に睡眠薬でも混ぜたんだろう。
昏睡状態になったところを一人ずつ襲ったんだ」
「どうしてバラバラの場所に死体が?」
「捜査をかく乱するためだろう」
「そうですかねぇ」
若い刑事は上司の言葉に懐疑的だ。
家の中は綺麗に整っており、荒らされた形跡はない。
通帳や貴金属などの貴重品は手つかずのまま残されている。
少なくとも、物取りが目的の犯行ではなかったようだ。
「とりあえず、この一家の周辺情報を探れ。
恨みを抱いている物はいないか洗い出すんだ」
「分かりました」
若い刑事は上司の言葉に素直に従う。
「それにしても……あんまりだな。
まだこんなに若いのに……」
悲しそうな視線を落とす上司の刑事。
どんなに場数を踏んでも、子どもの犠牲者を見ると胸が苦しくなるのだろう。
あまりに不憫そうだ。
「ええ……俺も自分の子供のことを思い出しましたよ。
ちょっと可哀そうですよね」
共感を示す若い刑事。
そういうことを言ったら、後で死亡フラグが立つのはお約束。
彼の運命やいかに。
「あのさ」
「……なに?」
彼が声をかけて来た。
「真剣に見てるけど、それ面白いの?
刑事ドラマなんて同じ展開ばかりだろ。
出てるのも年配の俳優ばかりだし」
つまらなそうな顔をして言う彼。
分かってないなぁ、分かり切った展開が続くから面白いんじゃないか。
私が予想した通り若い刑事は殺されてしまう。
犯人は上司だった。
しかも捕まらない
バッドエンド。
これはちょっと予想外だったぞ。