毒の沼地前支店 フロントより
ツッコミ「やっとここまで辿り着いたか……長かった。ついに魔王城が見える所まで辿り着いたが、ん? 宿屋? こんな所に宿屋があるのか? 万全を期すためにもここは一泊して疲れを取ってから魔王城へ向かうとしよう!」
ボケ「いらっしゃいませ~おひとりさまでしょうね」
ツッコミ「言い方が悪いがひとりだ」
ボケ「お泊まりですか? それともご入浴だけでしょうか?」
ツッコミ「ん? 泊りは解るが、入浴だけでも利用できるのか」
ボケ「はい、当店は毒の沼地前に店を構えている事もあり、ご入浴だけでもご利用できます。天然温泉かけ流しの大浴場や、温泉の素などもお土産に買われる方も大勢います。本日お泊まりの団体客様も箱買いなさって下さいました」
ツッコミ「へぇ~毒の沼地前にこの様な店が……毒の沼地!? さっきは普通の荒野に見えましたが!?」
ボケ「幻術ですね。魔王の幻術で荒野に見えております」
ツッコミ「こんな所で貴重な情報が入るとは……」
ボケ「私としては温泉の方が貴重なので是非ともご利用下さい。一度入るだけで体力は全回復致しますし、血行促進、いぼ痔にデバフ効果無効と色々効能があるんですよ~」
ツッコミ「そ、それは凄いな! 毒の沼地に入っても毒に掛からないということか!」
ボケ「そうなんですよ~ですから本日も魔王軍の方々がご利用して頂き、温泉の素をご購入されているのです。近くの街に行くのにも毒の沼地を通るので苦労しているそうですよ」
ツッコミ「なら毒の沼地などやめればいいのにな」
ボケ「そうすると、お客さまの様な勇者気取りが現れて対応が面倒だと、以前宿泊していた魔王が仰っていましたよ」
ツッコミ「魔王が宿泊しに来ているのかよ! って、勇者気取りじゃなくて勇者! 俺は勇者だよ! 装備だって勇者の剣に勇者の盾に勇者の鎧と勇者シリーズを網羅してやってきたんだ!」
ボケ「お客様は勇者さまだったのですね! 通りで勇者っぽい雰囲気に勇者っぽい歩き方に勇者っぽい語尾をお使いになって、まるで勇者ですね!」
ツッコミ「馬鹿にしてるだろ!」
ボケ「そんな事は御座いません。勇者さまの到着をお待ちしておりました! 本日は最高の部屋に最高のお料理で持て成させて頂きます。それに勇者さまがご宿泊されればこの毒の沼地前支店も箔が付くというものです!」
ツッコミ「支店だったんだ……」
ボケ「はい、王都に本店がありますが、あちらは温泉などの名物がなく……本店という名誉以外は普通の宿ですね……はぁ、王都にも毒の沼地があったら名物になるのに……」
ツッコミ「物騒だね! 王都に住む人たちが困る様子が目に浮かぶよ!」
ボケ「ですが、毒の沼地という名物があれば……ここは冒険者を大量に雇い王都の本店前に設置した方が……」
ツッコミ「ダメだよ! 絶対にダメだよ! そんな事したら宿屋というよりテロリストだよ!」
ボケ「そうですか……それでは御宿泊日数を確認させて宜しいでしょうか?」
ツッコミ「ああ、それなら一泊で」
ボケ「一泊で宜しいのですか?」
ツッコミ「ああ、一泊で大丈夫です」
ボケ「本当に一泊で大丈夫なのですか?」
ツッコミ「しつこいな! 一泊だよ!」
ボケ「そうですか……どうせなら何泊かしてレベルを上げた方が……」
ツッコミ「これでも勇者として強者と戦い強くなったのだ!」
ボケ「そうですか……それなら一泊ですね。それはそうと、強者と戦った勇者さまなら魔王が放つ死の視線対策や、氷の息吹を吐くフロストドラゴン対策なども?」
ツッコミ「何!? それは初耳だ。死の視線とかどうやって防げというのだ……といか、何故そのような事を知っている! さては女将も魔王軍の!」
ボケ「いえ、以前ご宿泊した時に聞いた話です。私がお酒を御酌した際にも目を瞑ったままなのでお聞きしたら、そのようにお答えになって、フロストドラゴンの方も風邪引く割に寒くないと駄々を捏ねると申しておりましたよ。そうそう、こちらのインナーを着て頂ければ暖かく、こちらの靴下も履いて頂ければ寒さ対策にバッチリです」
ツッコミ「疑ってすまなかった。購入しよう。それにしても受付横にしては商品が揃っているな。温かインナーに温か手袋……フロストドラゴン対策グッズは魔王軍からの要請で置いているのか?」
ボケ「そうなんですよ~二階の極寒エリアは他の魔族たちからも不評で、ここに泊った魔族の方は必ずと言っていいほどご購入されます」
ツッコミ「そ、そうなのか……この木刀とかは」
ボケ「売れた所を見た事がありませんね。皆さん木刀よりも強い拳や爪などをお持ちで、勇者さまも立派な剣をお持ちなようで……」
ツッコミ「勇者の剣だからな」
ボケ「そうですわ! 今さっきお売りしたインナーと靴下も勇者さまが装備なされれば、勇者の温かインナーと勇者の温か靴下として販売できますね! こちらの死の視線を無効にするサングラスも、勇者のサングラスとしてご購入されては如何ですか?」
ツッコミ「もういいよ!」




