実を言うと
「ねえ、レイ。おつかいを頼みたいんだけど」
午後のお茶の席に飾ろうと、クリスマスローズを切っていたレイチェルが室内に戻ると、唐突にレヴィがそう言った。おつかい?とレイチェルが首を傾げると、にっこりと笑って頷く。
その、何か企んでいるのでは、と疑ってしまいたくなるほどの爽やかな笑顔に、レイチェルの眉間に僅かな皺が寄ったが、レヴィは気にも留めずに言葉を紡ぐ。
「うん。サリーのところにね。これを届けてほしいんだ」
レヴィはそう言いながら、手に持っていたバスケットをレイチェルの目の前の机に置いた。中を覗き込んで見れば、ピンク色の綺麗なアイシングのかかったケーキと、クッキーが入っている。
バスケットから顔を上げ、尚も楽しそうな笑みを浮かべているレヴィに、レイチェルは問いかけた。
レヴィがサリーと呼ぶのは、クライヴと一緒の時にも会ったサミュリアの事だ。サミュリアの暮らす鳥籠も、この近くにある。
「サミュリアに?届けるのはいいけれど、でも今からだったら、あなたが行った方がいいのではない?わたくしが歩くより早いのだから」
サミュリアは少し大ざっぱなところがあるが、お茶の時間と食事の時間はいつもきっちりとしている。これを今から届けるだけなら、レヴィが行った方が間に合う。そう思ったからレイチェルはそう言ったのだけれど、レヴィは申し訳なさそうな顔で首を振った。
「僕は残念ながら、今日はここでお客様をお迎えしないといけないんだ。実を言うと、サリーにはもう伝えてあってね。可愛いレイの為なら、お茶の時間は少し遅くしてあげるってさ」
何も聞いていない、とレイチェルは言おうとして、はたと気が付く。以前にも、似たような事があったと。
「わたくしはいない方がいいお客様なのね?」
「まあね」
肩を竦めながら苦笑するレヴィに、レイチェルはため息を吐く。だが、それ以上追及する事は止めた。レヴィが会わせたくないのなら、会わない方が良いのだ。
例えば、レイチェルが伯爵令嬢と知っていた場合や、眷属といえどレヴィの側にいるのを嫌がる嫉妬深いご婦人だった場合、楽しい結果にはならないのだから。
「そ。まあいいわ。わたくしもサミュリアに会いたいし」
「その花も持って行っておあげ。それから、泊まって来てもいいよ。サリーも喜ぶ」
「それじゃあお言葉に甘えて、そうさせてもらうわね。あなたもせいぜい楽しんでちょうだい」
レイチェルはそう言ってにっこりと笑うと、バスケットを持ってサミュリアの家へと向かったのだった。




