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侯爵様はヴァンパイアを妻にお望みのようです  作者: リラ
乙女は薔薇のように、鮮麗に
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取り戻したいのなら

四年前、レイチェルは馬車に轢かれて重体となり、伯爵家へ運び込まれて二日後に息を引き取った。だが夫人は、それを受け入れる事が出来ず、死亡の報告を拒んだ。


狂わんばかりに泣き叫び、レイチェルの側を決して離れない。それを見た伯爵はしばらくは好きにさせようと、放っておく事にした。


男爵家との婚約が無くなってからというもの、伯爵はあまりレイチェルに構わなくなり、一人娘が亡くなったというのに、涙のひとつも見せない。


だからか、眠っている間にどこかに連れていかれないようにと夫人はあまり眠らず、青白い幽鬼のようになってしまった。


そんな日々が二、三日も続いたある日、夫人はレイチェルの遺体と共に、教会を訪れる。


どうすれば娘を取り戻せるか、という夫人の問いかけに、神父は言った。森へ行けば鳥籠のヴァンパイアが血を与えてくれるかもしれない、と。


本来は教えてはならない事なのだが、あまりに悲しむその様子に、胸が痛んだのかもしれない。


『化け物にしてまでも取り戻したいのなら、行きなさい』と。


その言葉通り、夫人は鳥籠の森を訪れた。鳥籠はこの国を囲む東西南北の森に点在するが、詳しい場所は誰も知らない。神父もそれだけは教えてくれなかった。当てもなく森を彷徨っていた夫人の前に見目麗しいヴァンパイアが姿を見せたのは、疲れ果てて座り込んでいた時である。


日が暮れて、そろそろ帰らないと、と考えていた婦人の前に立ち、金髪碧眼のそのヴァンパイアは、不思議そうに首を傾げて問いかけた。


「ここに人間がいるなんて珍しいね。何をしているの?」

「あなたは、鳥籠のヴァンパイアですか?」

「そうだよ。その子はあなたの娘さんかな。眠っているわけでは無いよね」

「……教会の方に言われたのです」

「ヴァンパイアに血を与えて貰えって?」


夫人はもしかしたら怒るのでは、と懸念したが、彼のその口調は怒っているというよりは、面白がっているようだった。それに勇気づけられ、夫人は口を開いた。


「お願いします。この子を助けて下さい。まだ十八歳になったばかりなのです。ようやく前向きになって来たのに、こんなのはあまりに……」

「そう。まだまだ子供だね。可哀想に」


彼はそう言うと、夫人が反射的にレイチェルを庇おうとするのをすり抜け、レイチェルの体を抱き上げる。


「この子は僕が預かるよ。そうだな、二年くらい必要かな。その後は、あなたの元に帰すと約束する」


微笑みながらそう言って、彼は森の奥へと消えて行ったのだ。



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