知りたい事
王妃の挨拶が終わると、皆それぞれ動き始める。クライヴとレイチェルは王妃に軽く挨拶をしてから、別々の場所に落ち着いた。
クライヴはレイチェルを気遣う素振りを見せていたが、オニール伯爵夫人にレイチェルが捕まったせいか、苦笑しながら男性陣の方へ向かったのである。
レイチェルの腕を取って木陰へ移動し、早速オニール伯爵夫人アリシアは口を開く。クライヴのいとこである所の彼女は、あのお茶会以来、レイチェルをすっかり気に入って、しょっちゅう手紙を書いてくれる。
「レイチェル様。会うのはお久しぶりね。お元気?」
「はい。つつがなく過ごしておりますわ、オニール伯爵夫人」
「あらやだ。名前で呼んでと言ったじゃない」
「そうでしたわね、アリシア様」
アリシアの言葉にレイチェルが笑って頷くと、アリシアがまるで子供のように、楽しそうに笑う。実際、アリシアは少し子供っぽいところがあるけれど。
「何だかね、新しい妹が出来たみたいな感覚なのよ。この前のお茶会は楽しかったわね」
「ええ。わたくしの想像とは全く違う方で。偏見はいけないと思い知りましたわ」
「どんな想像をしていたの?……なんて、分かってるの。でも知りたいと思うのだから、仕方がないのよね。こそこそ話されたら気になってしょうがないじゃない?」
それは確かに、とレイチェルも同意する。レイチェル自身は、噂の対象にされていた方だ。どんな噂かは本人も知っている。婚約解消後、結婚もせずに夜会を渡り歩く娘だと。
特に、同年代の者の視線がレイチェルに刺さっていたものである。そこには、いつまでも綺麗な顔をしたレイチェルへの嫉妬が含まれていた。
ただ、誰々の愛人だと嘘を言いふらされても、娼婦のようだと馬鹿にされても、レイチェル本人がどこ吹く風だったため、すぐに別の標的に移ったけれど。
社交界と言うものは、大半がそういうものだ。多くの噂が生まれては消え、消えては生まれる。その中にどれ程の真実があるかは、甚だ疑問ではある。
けれどゴシップを楽しむ者たちは、それが本当かどうかなどはどうでもいいのだろう。共通の敵を作る事で平穏を保てるのなら、それはそれでいいとレイチェルは思っていた。
「クライヴ様に似ていますわね。クライヴ様も、知りたいことがたくさんあるようですもの」
「そう?いとこでも似るものなのね」
ふふ、とアリシアは上品に笑う。それから給仕から飲み物を二人分貰って、レイチェルにも差し出す。
レイチェルは礼を言って受け取り、口にして一息ついた。




