つれないのね
食事が終わると、男性陣はその場に残って、女性陣は居間へ移動する。レイチェルはそこで、先ほどは話せなかった婦人の隣に座った。
彼女は二回りほども年上だが、レイチェルにとっては数少ない友人のひとりである。深い色合いのドレスに、腰まで垂らした金色の巻き毛が美しい女性だ。
「レイチェル様。何だかお久しぶりよね?」
「こうやってお話をするのは、結婚してからは初めてになりますわね、シャーロット様」
「本当に。だけどつれないのね。私に一言教えてくれても良かったのに。あなたの口から聞きたかったわよ」
と言って拗ねてみせる姿は、とても可愛いらしく見える。現在未亡人である彼女だが、今でも男性からの誘いが絶えないとか。
シャーロット様ならそれも頷ける、といつも思うレイチェルだったが、シャーロットにその気が無いのはよく知っていた。
「それはごめんなさい。色々と忙しくしていましたもの」
「そうでしょうね。レヴィ殿は元気?」
「先日会った時は元気そうでしたわ」
「あら残念」
と、まったく残念に思っていないように言って、クスクスと笑う。シャーロットにとってレヴィは、初めて血を与えた相手だ。
シャーロットはただの人間でありながら、その日以来、寂しさを埋めるためか、それともただの趣味か、ヴァンパイアを侍らせるようになったのである。
初めてレヴィに引き合わされた時、レイチェルは驚いたものだ。自らの意思で、血を与えようとする人間がいるということに。
「シャーロット様は相変わらずですか?」
「そうね。そうそう。この間新しい子が来たのよ。この子が可愛くて。私の後をついて回っておねだりするの。それがたまらないわ」
「ほどほどにしてくださいね。嫉妬深くはありませんが、行き過ぎはいけませんわよ?」
「気をつけているわ。平等にね」
ヴァンパイアは基本的に、同族で争う事を好まない。けれど、万が一という事もある。おそらく教会の監視がついているのだろうが。
「わたくしたちには、あなたのような方がいるのは嬉しいのですわ。ですが、それが原因となることも十分あり得ますもの。お気をつけくださいませ」
「安心して、レイチェル様。こんな私でもちゃんと分かっていてよ。私は彼らを悲しませたいわけじゃない。少しでもいいから、安らぎの場を与えたいだけ。いつの日か、こういう人間もいたなと、たまに思い出してくれたらいいわね」
「シャーロット様のその考え方が、わたくしは好きですわ」
レイチェルが言うと、シャーロットは嬉しそうに笑う。認められなくてもいいと思っていても、やはりそう言われるのは嬉しいのだった。
その後二人は別の婦人たちの会話に加わったが、そこにヴァンパイアと、それに糧を提供する者が紛れているなど、誰も気がつくはずもなく、時折二人はこっそり視線を合わせて笑いあった。




