表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
侯爵様はヴァンパイアを妻にお望みのようです  作者: リラ
お茶会は蝶のように、優雅に
45/120

優しい

レイチェルは手袋を外して手を伸ばし、クライヴの額に触れる。物凄い熱だ。きっと無理をしていたのだろう。これでは倒れてもしょうがない。


「レイチェルの手は、冷たくて気持ちがいいな」


と、そんな事を言って笑うクライヴに、レイチェルも笑う。


「クライヴ様が熱いのです。……と、言いたい所ですが、わたくしの体温は確かに人より低いですわね」

「暑さは苦手そうなのに、レイチェルの方が元気だな」

「こう見えてヴァンパイアですので。ああ、そうですわ。少し目を閉じて下さいます?」


その言葉に大人しく目を閉じたクライヴに笑い、そして、椅子から腰を浮かせると、クライヴの前髪をかき分け、その額に口づけを落とす。


3秒ほどしてレイチェルが離れるのと同時に、クライヴは目を開けた。


「今のは……」

「熱を少しいただきましたわ。これで少しは楽かと」


言われてみればその通りで、体が軽くなっている事を感じる。クライヴは先ほどよりも楽になった呼吸のもと、驚いた様子でレイチェルを見つめた。


「そんな事も出来るのか」

「クライヴ様はよくそう言いますわね」

「初めての事に驚くのは当然だ」


真面目な顔で言うクライヴに、確かにその通りだわ、とレイチェルはくすくすと笑う。


本来、熱を取るという行為は、人間の命を奪う際に行うものであるが、加減をすればこういう事も出来る。レヴィが以前、レイチェルに教えた事だった。


「熱をとっても、レイチェルに影響はないのか?」

「今の場合、人間の平熱くらいに上がるだけですわ」


そう答えながら、心配されて嬉しいと思ったのは、気のせいでは無いはずだ。人であろうとヴァンパイアであろうと、気遣われて嬉しくないものはいないだろう。


そしてその気遣いを、レイチェルに一番見せてくれていた人の事を思い出す。


「体温が低いといえば。伯爵家に戻った日に、お母様が抱き締めてくれたのですけれど、その時わたくしのあまりの冷たさを心配したのか、暖炉に引っ張り、毛布を何枚も着せられましたの。こういう体なのだと説明するのに、だいぶ時間がかかりましたわ」

「それだけ心配だったのではないか」

「ええ。あんなに慌てた様子のお母様は、あの時初めて見ました。いつもおおらかに笑って、ゆったりとしているから」


娘の帰還を泣いて喜び、ヴァンパイアであろうと可愛い娘だ、と言ってくれた事がレイチェルの救いだった。例え父親と兄に嫌われようと、それだけで十分だったのだ。


「あまり、レイチェルとは似ていないような気がしたが。優しいその性格は、母親譲りだな」

「優しい、ですか?」

「ああ。優しいし、一緒に居ると、何故か安心する」

「そうですか……。クライヴ様のご両親は、どのような方だったのですか?クライヴ様はどちらに似ていらっしゃるのでしょうか」


そう聞いたのは、気恥ずかしさからだったかもしれない。前侯爵夫妻の事が気になっていたという事も、事実ではあったけれど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ