一瞬で
「お二人は仲がよろしいのですわね」
レイチェルがそう言うと、伯爵夫人と男爵夫人は顔を見合わせて笑った。対照的な二人だから、逆に気が合うのかもしれない。
「年の近い従姉妹は、こちらの男爵夫人、面倒だからもう名前で呼びましょう。アグネスだけなのよ」
「あとは年が離れていたり、男だったりしますからね。アリシアは男兄弟ばかりだから、自然と仲良くなりましたのよ。小さな頃は、ふたりでよく遊んだものですわ」
「楽しそうに遊ぶお二人が目に浮かぶようですわ」
微笑んで言ったレイチェルに、あの頃はただただ楽しかったわねぇ、と二人が相槌を打つ。
この二人が従姉妹ということは、クライヴともそうだという事だ。王は6人兄妹で、それぞれ結婚し子供がいるのだから、従姉妹が多くなるのも当然である。
伯爵夫人アリシアは、ビスケットに手を伸ばしながらわずかに身を乗り出して、レイチェルに問いかけた。
「私たち二人でいつも話していたのよ。クライヴ殿は誰と結婚するのか。もしくはしないのか。だから結婚したと聞いて驚いたし、あなたと是非ともお話をしたかったのよ。クライヴ殿とはいつどこで出会ったの?」
少女のように目を輝かせるアリシアに、レイチェルはわずかに苦笑する。男爵夫人アグネスもその令嬢も、興味津々といった風情だ。
きっと、今日一番聞きたかったのはこれだろう。とはいえ、本当のことを話すわけにもいかず、当たり障りなく答えるしかない。
今日話した事はきっと、数日後には多くの人が知る事になるだろう。社交界とはそういうものだし、自分がどう噂されているかを知って楽しむのも、また一興。
レイチェルは紅茶を一口飲み、わざとらしく勿体ぶりながら口を開く。きちんと、言葉を選ぶのも忘れずに。
「……ひと月ほど前に、夜会でお会いしたのが初めてですわ。そこで少しお話をしていましたら、意気投合したと言いますか。そしてその日のうちに結婚を申し込まれましたの」
「まあ、素敵!一瞬でお互いに惹かれあったのね。きっと運命だったのよ」
「本当に。クライヴ殿にもそんな気概がおありだったのですね」
「夢のようなお話ですわ」
「そんな大層な事ではありませんわ。ただ、お互いに相手がいなかっただけの事ですもの」
ヴァンパイアに興味がある、という理由で結婚を申し込んできたのだ。運命だとか、そんな大げさな話ではない。
だが、苦笑するレイチェルが、三人には恥ずかしがっているようにしか見えないのだった。




