叔母様はよして
広間に戻ったレイチェルは辺りを見渡し、真っ先にクライヴの姿を捜した。
だが、ダンスが始まったホールでは難しい。その為レイチェルは壁際に寄って、ひとまずはダンスが終わるのを待つことにする。他にも壁際でダンスを眺めている人たちはいるので、一人で立っていても不自然では無かった。
色とりどりのドレス姿の令嬢が優雅に踊る姿は、花が咲き乱れるかのようで、目にも楽しくて美しい。こういった場所で、若い燕を見つけるご婦人もいるとか。これまでのレイチェルであれば、血を貰う相手を捜すところだが、もちろん今は必要のないことだ。
本来の年齢は22歳とはいえ、見た目は18歳のままのレイチェル。壁際に立つ女性の誰よりも若々しく、クライヴと結婚していなければ、今もあの輪の中で踊っていた事だろう。
(クライヴ様はどんなダンスがお得意かしら)
それでも自然とそう考えるレイチェルは、すでにあの輪の中に自分の居場所は無いという事を知っている。
と。
「レイ?」
自分の愛称で名前を呼ばれ、レイチェルは声のした方を見た。少し視線を動かし、そこに立って首を傾げている人物を見つけると、自然と笑顔になりながら歩み寄る。
「フランチェスカ叔母様。お会いできて嬉しいですわ」
膝を折って挨拶をしたレイチェルに、フランチェスカはころころと笑う。優雅な栗色の巻き毛に、ぱっちりとした大きな栗色の瞳。背はレイチェルより低く小柄で、可愛らしいという印象を与える。
胸元の花の刺繍も、チュ-ルやレ-スを幾重にも重ねたクリームイエローのドレスもまた、彼女に可憐な印象を付け加えていた。
彼女は、レイチェルの母、エイヴリー伯爵夫人の妹にあたる人物で、現在は結婚してマクレナン子爵夫人となっている。
「来ているのは知っていたけれど、挨拶が遅れてごめんなさい。私も会えて嬉しいわ、レイ。それに結婚おめでとう。ところで、叔母様はよして。3つしか違わないのに。すっかり年を取ったように感じてしまうわ」
少し拗ねたような姿に、レイチェルは自然と笑みが零れる。伯爵夫人とフランチェスカは、17歳もの年の差がある姉妹。伯爵夫人が結婚したのが17歳で、そのすぐ後にフランチェスかは生まれた。そして、その3年後にレイチェルが生まれた、というわけである。
4年ほど前にフランチェスカが結婚するまでは、伯爵家にもよく遊びに来ていたし、祖父母の家に遊びに行く事もあり、レイチェルにとっては確かに、叔母というよりも姉妹に近い感覚だった。




