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侯爵様はヴァンパイアを妻にお望みのようです  作者: リラ
邂逅は夕立のように、突然に
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よろしいでしょう

「そんな事はしない。何のために声をかけたと思っている」

「何のためですの?」


きょとんとする彼女は、聞いていた年よりも若く見えて、彼は少し笑う。ヴァンパイアだという以外は、普通の、どこにでもいそうな貴族令嬢だ。


ただし、棘のある薔薇のような。


「そなたを俺の妻とするためだ」


彼の言葉に彼女は僅かに目を見開き、続いて、案じるような表情をしてみせる。


「アッシュベリー侯爵様。こう言っては失礼でしょうが、どこかで頭でも打ったんですの?」

「いいや。至って健康体だぞ。……実は、俺はずっとヴァンパイアの生体に興味があってな」

「ああ、なるほど。それで、わたくしのような研究対象を捜していたわけですの」

「理解が早くて助かる」


口元に笑みを浮かべる彼に、彼女は小さく息を吐く。ヴァンパイアではあるが、女性に向かって、研究対象になれとは。


この男に25歳にして婚約者すらいない理由が、よく分かった。社交界で真面目の他に何と噂されているか、たまにしか舞踏会に参加しない彼女も、よく知っている。


「さすが変り者と名高い侯爵様ですこと」

「俺の妻とするからには、不自由はさせない。ただ、俺の研究に付き合ってくれればいい」


そう言った彼に、彼女は少し思案する。年をとらないヴァンパイアでも、人間と結婚する事はあった。だが彼女には、周囲がどう願おうと、その気は無かったのだ。


舞踏会に参加していたのは、ただの暇潰し。誰と誰がくっつきそうか、誰が誰の愛人なのか、そういったことを観察し、初な男を誘って血を貰う。それが、彼女の夜の渡り方。


とはいえ、こういう人なら結婚してもいいかしら、とこの時の彼女は思ったのである。


「よろしいでしょう。何か他に条件は?」

「ん?そうだな……。俺の妻となるのだから、俺の血以外は口にしないこと。妻として舞踏会などに一緒に出席すること、くらいか」

「お約束いたしますわ」

「ではさっそく伯爵にそなたと……。そういえば、名は?」


そう問われた彼女は、ふふっと、楽しそうに笑った。女性に名前を聞くことは、それだけで求婚に他ならないのだが。結婚が決まった相手に聞くとは、可笑しな話だ。


「レイチェルですわ。アッシュベリー侯爵様」

「俺の事はクライヴと呼べばいい。その方が夫婦らしいからな」

「では、クライヴ様。これからどうぞ、よろしくお願いいたしますわ」

「ああ。行くぞ。伯爵にそなたとの結婚の許しをもらわねばな」


そう言って歩き出したクライヴの後に、レイチェルはゆったりとした足取りで続いたのだった。


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