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侯爵様はヴァンパイアを妻にお望みのようです  作者: リラ
思い出は星のように、銀色に
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ぶれない人

「ああいう人は苦手だわ。血も美味しくなさそう……」


人の少ない壁際に寄り、顔をしかめてレイチェルが小さく呟くと、耳敏く聞き付けたクライヴが苦笑する。クライブとて好き好んで相手をしたい、というわけでもなく、レイチェルの言葉には非常に同感だった。


「俺もだな。だが、こういう場に来て損はない。情報交換は重要だ」

「貴族は大変ですわね」

「まったくだ。ところで、この場にヴァンパイアはいるのか?」


この人の興味はぶれないのね、とレイチェルは笑った。それから会場をゆっくりと見渡し、その気配を探る。ヴァンパイアの力を使う時は、必然的に目が赤くなってしまうけれど、この場では誰も気にしないし、光の加減でしょう、とでも言えば済む。


レイチェルの目は、この場にいるヴァンパイアの姿をはっきりと捉えたが、それがどの人物かは口にしない。教会の人間も数人見つけたが、これも言う必要はないだろう、と判断した。


「ええ。二人ほど。わたくしもよく、ああいった方と情報交換をしていましたわ。……、あら?」


僅かに首を傾けたレイチェルに、クライヴがどうしたと訪ねる。レイチェルは大広間を見回して、不思議そうな顔をしている。


クライヴも同じように見渡してみたが、歓談している者がいるばかりで、これといって気になるところはない。


「どうかしたのか?」

「……今、知っている気配がしましたの。わたくしに血をくれた……。ここ最近、夜会には来ていなかったようですのに」

「鳥籠の?出られるのか?」

「教会には公然の秘密ですけれど。以前にも言いましたように、ある程度の自由は必要ですもの。それは鳥籠の彼らも同じ。人間が知れば気味悪いと思うかもしれませんけれど、ここにいる誰も、そんな事には気がついてもいませんわ。多くの人間は、こんなに身近に紛れているなんて思ってもいないでしょうから。教会のヴァンパイアに関する教えの大半は、都合よくねじ曲げられたものとも知らず……」


『かつての力を失ったヴァンパイアは光を嫌う。日の光の下を歩く事は出来ず、煌びやかな舞踏会などもってのほか。教会は常にそばにあり、暗闇さえも照らしている。故に、怯えて暮らす事は無い。すべての魔は、教会がうち滅ぼすのだから』


要約すれば、それが教会が布教する言葉だ。レイチェルも素直にそれを信じていたけれど、目覚めた時それがほぼまやかしだと知り、怒るというよりは呆れてしまったものだ。


「わたくしたちは教会に守られている。つまり教会は、人間の敵を守っているのですわ」

「だがそれが、最善の選択なのだろうな」


と、そんな会話をしているうちに、レイチェルの気分も良くなってきたようだ。クライヴと共に挨拶回りを再開した頃には、すっかり緊張もほぐれていた。


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