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侯爵様はヴァンパイアを妻にお望みのようです  作者: リラ
思い出は星のように、銀色に
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噂の

煌めくシャンデリアと、煌びやかなドレスを着た令嬢たち。コーンウェル伯爵邸の大広間には、多くの貴族がひしめき合っている。さすが派手好きと名高い伯爵。別室に用意されている食事も豪華である。


夜会はいつ来てもワクワクする。レイチェルはクライヴの腕を取りながら、そんなことを思う。結婚した今となっては、舞踏会で踊る必要がないことは退屈だったが。


未婚の令嬢たちはダンスの誘いを待ち、既婚の女性は壁際に設けられたソファで、会話に花を咲かせている。たまに、彼女たちが自分をちらりと見ている事に、レイチェルは気がついていた。


きっと、あのアッシュベリー侯爵と結婚なんてどこの物好きな女かしら、とでも噂しているのだろう。細やかなレースの刺繍が施された、ブルーグレーのドレス姿のレイチェルは派手というわけでは無いにもかかわらず、その夜の多くの注目を集めていた。


「本日はお招きありがとうございます」


その視線を感じながらも優雅に口角を上げたレイチェルの前で、コーンウェル伯爵とクライヴが、握手をして挨拶を交わす。


コーンウェル伯爵は、でっぷりとした体型の五十がらみの男である。色欲に溺れ、私腹を肥やしているとかいないとか噂されているが、こう見えて昔は、軍部で辣腕を振るっていたというのだから、人は見かけによらないものだ。


とはいえ、とある貴人の妻に手を出し、左遷されたという公然の秘密がある為、今となっては過去の栄光なのだけれど。


それから伯爵はいくつか当たり障りのない会話をし、クライヴとの握手を終えると、次にレイチェルに目を向けた。


「そちらの方を紹介いただけますかな?」

「先日結婚しました、私の妻のレイチェルです」

「ああ。侯爵の心を射止めたという、噂の」


そう言って、レイチェルの頭の先から爪先までを、じろじろと眺める。いやらしい、と言ってもいいその視線に、不快感が募る。が、レイチェルは不快さを決して表に出さないように努めながら、優雅な微笑を湛えて口を開いた。


「初めまして。お招きありがとうございます」

「噂通り美しい方ですな」

「あら。お上手ですこと」


おほほ、と扇を口元にあてて笑うレイチェルだったが、内心ではいやらしい視線に苛々している。実際、クライブの腕に添えられた手に、僅かだが力が込められる。それに気が付きレイチェルに助け船を出したのは、もちろんクライヴである。


「……他にも挨拶をされたい方がいらっしゃるようなので、我々はこれで」


頭を下げ、二人揃ってその場を後にした時には、レイチェルは安堵のため息をついたほどだった。


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