てっきり
変わっている、はっきり言えば変人。周りからそう思われている事を、クライヴは知っている。結婚もせずに、という声が最も多いだろうか。王の甥として恥ずかしくないよう努めているつもりではあるが、あまり優秀過ぎても叩かれる。
幼い頃は、3つ年上の王太子殿下や、王子王女たちと宮殿中を駆け回り、乳母や侍女、果ては王妃様にまで、しょっちゅう叱られていたものだ。
もちろん、今はそんな真似は出来ないし、クライヴの足も宮殿から遠退いてしまった。それを彼らが寂しがり、用がなくてもたまには顔を見せに来なさい、と言われるのだけれど、私はただの臣下ですから、とお決まりの台詞を口にする。
別に彼らが嫌いな訳ではない。むしろ、血の繋がりがあるのは妹と彼らだけだから、愛しているに決まっている。問題は、クライヴが宮殿に、約束もなしに足繁く通えば、周りの目にどう映るかだ。
王の甥で侯爵ともなれば、いずれは王子たちの側に仕える事になる可能性もある。しかし、従兄弟も多いため、余計な争いはしたくない、というのがクライヴの本音。
今は亡き、前アッシュベリー侯爵夫妻も争いを好まぬ質であり、それはクライヴにも受け継がれているのだ。抜け駆けのように見える事を避けてきた結果、今のようになってしまったのである。
それに、一度ついた印象というものは、変えるのが難しい。だからこのままそう思われていた方が、何かと楽である。自分なりに楽しく過ごせれば、それだけで充分だ。
クライヴはレイチェルの言葉にそんな事を考えながら、別の言葉を口にした。
「……てっきり、首筋から飲むものだと思っていたが、違うのだな」
「それは……」
レイチェルは僅かに言い淀み、目を反らす。どう答えたら一番無難か。言葉を選びながら、レイチェルは続きを口にした。
「……首筋からでは、力加減が出来ませんもの。一応、顔色は見ながらいただきますわ。うっかり命を奪ってしまったら、取り返しがつきませんでしょう」
「なるほど。そういう事か。それがきっかけで争いにでもなれば、大変な事だからな」
納得した様子のクライヴに、レイチェルが少しほっとしたような顔をしたが、クライヴは気づかなかった。
首筋から血を貰う事は、ヴァンパイアにとっては別の意味がある。しかしレイチェルは、それを明かすべきか迷ったのである。
クライヴは、血の入った小瓶を揺らし、光に透かしている。そんな事をしても何の変化もない、ただの血だけれど。




