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侯爵様はヴァンパイアを妻にお望みのようです  作者: リラ
開幕は音曲のように、軽快に
25/120

てっきり

変わっている、はっきり言えば変人。周りからそう思われている事を、クライヴは知っている。結婚もせずに、という声が最も多いだろうか。王の甥として恥ずかしくないよう努めているつもりではあるが、あまり優秀過ぎても叩かれる。


幼い頃は、3つ年上の王太子殿下や、王子王女たちと宮殿中を駆け回り、乳母や侍女、果ては王妃様にまで、しょっちゅう叱られていたものだ。


もちろん、今はそんな真似は出来ないし、クライヴの足も宮殿から遠退いてしまった。それを彼らが寂しがり、用がなくてもたまには顔を見せに来なさい、と言われるのだけれど、私はただの臣下ですから、とお決まりの台詞を口にする。


別に彼らが嫌いな訳ではない。むしろ、血の繋がりがあるのは妹と彼らだけだから、愛しているに決まっている。問題は、クライヴが宮殿に、約束もなしに足繁く通えば、周りの目にどう映るかだ。


王の甥で侯爵ともなれば、いずれは王子たちの側に仕える事になる可能性もある。しかし、従兄弟も多いため、余計な争いはしたくない、というのがクライヴの本音。


今は亡き、前アッシュベリー侯爵夫妻も争いを好まぬ質であり、それはクライヴにも受け継がれているのだ。抜け駆けのように見える事を避けてきた結果、今のようになってしまったのである。


それに、一度ついた印象というものは、変えるのが難しい。だからこのままそう思われていた方が、何かと楽である。自分なりに楽しく過ごせれば、それだけで充分だ。


クライヴはレイチェルの言葉にそんな事を考えながら、別の言葉を口にした。


「……てっきり、首筋から飲むものだと思っていたが、違うのだな」

「それは……」


レイチェルは僅かに言い淀み、目を反らす。どう答えたら一番無難か。言葉を選びながら、レイチェルは続きを口にした。


「……首筋からでは、力加減が出来ませんもの。一応、顔色は見ながらいただきますわ。うっかり命を奪ってしまったら、取り返しがつきませんでしょう」

「なるほど。そういう事か。それがきっかけで争いにでもなれば、大変な事だからな」


納得した様子のクライヴに、レイチェルが少しほっとしたような顔をしたが、クライヴは気づかなかった。


首筋から血を貰う事は、ヴァンパイアにとっては別の意味がある。しかしレイチェルは、それを明かすべきか迷ったのである。


クライヴは、血の入った小瓶を揺らし、光に透かしている。そんな事をしても何の変化もない、ただの血だけれど。


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