表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
侯爵様はヴァンパイアを妻にお望みのようです  作者: リラ
邂逅は夕立のように、突然に
12/120

陽射しが降り注ぐ

「まあ。素敵なお部屋」


部屋に入って、レイチェルの口から真っ先に出て来たのが、その言葉だった。その隣で、クライヴが満足そうに笑っている。


青と白で統一された家具。奥に隣接するサンポーチには、小さな椅子と机があり、窓からは陽射しが降り注いでいた。


「……本当に、わたくしがこの部屋を使ってもよろしいのですか?」


この結婚は、ただの戯れ。お互いそのはずだ。だからもったいない、とレイチェルは思ったのだが、それが顔に出ていたのか、クライヴが笑いながら言った。


「妻を粗末な部屋に寝かせるほど、変人ではないつもりだ。亡くなった両親にも叱られてしまう。元々は妹が使っていた部屋だがな、今は嫁いでもう使っていない。掃除もしたから問題はないぞ」

「そういえば、他の使用人の姿を見かけておりませんわね。どちらに?」


当然、掃除は使用人がしたのだろう、と思いながらも、使用人がいないのを不思議に思っていたのだ。領地にある屋敷より小さいとはいえ、伯爵家の町屋敷には常に使用人たちの姿があったものだ。


レイチェルのそんな質問に、クライヴは苦笑しながら首を振る。


「この家の使用人はさっきのエディと、料理人のイライアスだけだ。領地の方にもう一人いるが、そちらは追々でいいだろう」


何故そんなにも少ないのだろう、とレイチェルは訊ねようとしたが、その答えはすぐにクライヴが口にした。


「父の代には大勢いたが、俺に付き合いきれず辞める者が多くてな……。すまない。言い忘れていた。身の回りの世話は、自分でしてもらうことになる」

「それでしたら大丈夫ですわ。大抵は一人で出来ます。ただ、夜会のドレスはさすがに無理ですので、その日だけは、臨時で雇っていただければ」

「分かった。では、着いて早々だが、今後について話し合いたい。いいだろうか?」

「ええ。構いませんわ」


レイチェルが頷くと、クライヴはレイチェルを誘い、サンルームの椅子に腰かけた。窓の向こうには王城が見える、特等席だ。


ヴァンパイアにとって、日の光は有害では無い。確かに夜活動することが多いが、それは単に、多く人が集まる舞踏会などが夜にあるからに過ぎない。


日の光や十字架が苦手だとか、そんなものはもはや迷信だった。


クライヴもそれを知っているから朝に迎えに来たのだろうし、こうやってサンルームにも誘う。レイチェルの部屋に、最も日当たりのいい部屋を選ぶ。


でなければ、昔の迷信を信じて、ヴァンパイアを殺そうとしたという事になってしまう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ