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侯爵様はヴァンパイアを妻にお望みのようです  作者: リラ
真愛は泡雪のように、静かに
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心地よい暖かさ

今年初めての雪が舞い降りる中、その屋敷へ多くの馬車が乗り付けられている。レイチェルは馬車から降り立つと、白い煉瓦造りの立派な屋敷を見上げて吐息をついた。


広大な敷地を有するアインツ公爵邸は、王も滞在する事があるため、宮殿並みの部屋数があるという。たち働く使用人の数を見れば、それだけで目が回ってしまいそうだ。


「さすがはアインツ公爵。王弟殿下の屋敷なだけはあるよ。豪奢ではあるけど、無駄なところがない。僕も何度かお邪魔したけど、調度品なんかも洗練されていてね。公爵はケチだなんて言われてるけど、僕は結構好きだな」


レイチェルに続いて馬車から降り立ったレヴィが、同じように屋敷を見上げて言う。隣に並んだレヴィの腕に手を添えながら、レイチェルは口を開いた。


「この時期にこれだけの人を集められるのは、王弟殿下だからよね。他の人じゃこうはいかないんじゃないかしら。みんな、すり寄ろうと必死なんだわ。いくら陰口を叩いていてもね」

「そんなにはっきり言うなんて、はしたないよ、お嬢さん」

「あらそうね。ごめんあそばせ」

「ふふ。さぁ、中に入ろうか」


二人は正面の階段を上がり、屋敷の入り口で招待状の確認を済ませると、そのまま大広間へと向かう人の波に乗って足を進める。


まるで色とりどりの蝶の群れのようだと、ふとレイチェルは思う。


皆、時期外れの舞踏会に浮かれている様だが、その表情は分からない。何故ならば、皆一様に仮面を着けているから。


そう、今日は仮面舞踏会なのだ。


それぞれに趣向を凝らした仮面を身につけ、女性のきらびやかなドレスもさることながら、男性も普段の舞踏会の燕尾服ではなく、色鮮やかなジャケットスタイルである。


レヴィは紺色の長めのジャケットで、金色の髪を緩く結んで肩に流し、顔半分を覆う青い羽飾りのついた仮面を着けている。


それでも麗しさは隠しきれていないようで、ご婦人たちにあれは誰かしら、とチラチラ視線を投げ掛けられていた。


一方のレイチェルは、いつもの首元まで覆うスタイルではなく、胸元の大きく開いた大胆な赤と黒のドレスに、揚羽蝶を模した黒い仮面だ。


本人としてはこんな目立つドレスは気に入らないのだが、レヴィの、普段は着ないようなものを着た方がいい、と言う言葉を受け入れた結果、今の姿になったのだった。


大広間へ続く廊下は、丸いアーチ状の窓が奥の扉へ規則正しく並び、壁には歴代の王を描いた肖像画がかけられている。


シャンデリアの灯りが、扉へ向かう招待客たちを優しく照らし、心地よい暖かさで出迎えてくれているかのようだ。


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