女神ステラの世界が救われた話をしよう世界-尊敬という好意-
「王都はほとんど復興しているみたいね」
「お父様が何よりも復興に力を注いだ結果です。良い政治を為さったと思います」
「その誉め言葉、本人にちゃんと言ってあげた?」
「……いえ、まだです」
「アフリードは誰よりもあなたに認められることが嬉しいのだから親孝行をなさい」
「お父様がいけないんです。最近は私の話をあまり聞こうとしませんし、結婚の件も最初は承諾してくださっていましたのに……式が近くなった今頃になって」
「親心は複雑というやつね。具体的に話を聞いてもいいかしら。親子仲が悪いまま結婚式はあなたもしてくないでしょ。手助けできるかも」
「身内のことでステラ様のお手を……いいえ、遠慮しすぎと言われたばかりでしたね」
「そうそう。夫となる勇者殿も貴方達親子が不仲だと最悪結婚式自体の中止を言い出しかねないわよ。彼はそういう人だし」
「……」
私の言葉にトワネスはなぜか不安げな視線を向けてきた。何か不安にさせるようなことを言ってしまっただろうか?
「実は……ずっとステラ様にお聞きしたかったことがあります」
「何? 遠慮はいらないわよ」
トワネスは一度深く深呼吸をすると意を決した目をした。
「ステラ様は彼、ステラ様が勇者殿と呼ぶ彼の事をどう想っていらっしゃいますか?」
「どう想う? 勇者殿の事は立派な人だと思うし、とても感謝しているわ。口が乱暴な時もあるけれど優しく、決して困っている人を見捨てない。どれほどの絶望が目の前に示されても決して希望を捨てない勇気ある人。繰り返しになるけど、立派な人」
私は勇者殿との辛くも充実して最後には楽しいと感じた旅を思い返しながらトワネスの質問に答えた。
「それは私も分かっています。ですが、私の聞きたいことはそういうことではなく……」
「そういうことじゃない? ……あっ、なるほど」
トワネスの不安そうにしていた理由が二度の問い詰めでようやく理解できた。先ほどの質問は私が勇者殿を男性としてどう想っているかを聞きたかったのだろう。
自分の夫なる男性に想いを寄せているかもしれない人がいる。しかもそれが女神かもしれないというのであれば妻として不安を抱くのはしかない。
この場は私の素直な気持ちをトワネスに告げるべきだろう。
「トワネス。私は勇者殿に好意を抱いているわ」
「!?」
「でもね。この好意は恋とは違うの。言葉にするのは難しいのだけど……尊敬の好意といえばいいのかしらね。彼は私が無理やりこの世界へ連れてきた別世界の人間。救ってほしいとステラは願ったけれど、そんな願いは効かなくても誰も文句は言わなかった。非難されるのはステラだけ。なのに勇者殿は本当は無関係だったこの世界のため、人々のために命をかけて戦ってくれた。こんな駄目な女神が尊敬するには充分な行動だったわ」
私の言葉を聞いてもトワネスはまだ不安そうだった。
「納得はしてくれてないみたいだけどね。結局は勇者殿の気持ちが一番。彼はあなたが大好きでとても愛している。魔王との最後の決戦の時はあなたへの愛の力で勝ったようなものよ」
「そうなのですか!?」
「勇者殿から聞いてないの」
「は、はい、仲間と力を合わせたことで倒せたとしか」
「結構恥ずかしいセリフ言ってたわよ。スティルグも聞いていたから彼の性格から言って勇者殿が話していなくてもこっそり貴方には教えているのかと思ったけど」
「そうなのですね。スティルグには近づかないようにとお父様と騎士団長から言われていたのもあり、ここ一年はほとんど会話していませんでしたので機会がなかったのかと」
「その二人に警戒されるって……副騎士団長よね、スティルグ」
「ははっ、そのはずなんですけどね」
「まあ今の話は私から聞いたと勇者殿に言って直接本人からも聞くといいわ。恥ずかしがりながらもきちんと話してくれると思うわよ。あなたへの気持ちなんですもの。彼のそういうところの誠実さは知っているでしょ」
「はい、とてもよく」
トワネスの表情から不安がようやく無くなったようだ。




