女神ステラの世界が救われた話をしよう世界-家族での話-
「勇者殿がお城に来てから一年、いえ、正式に交際を考えればもっと前からなんだから覚悟を決めたのかと思ったわよ。魔王との最後の戦いに行く前夜とか勇者殿とトワネス姫を二人っきりにさせてあげたりしてたでしょ」
「あの日は自分自身で下手なことをしないようにと睡眠薬と強い酒を呑んで寝てしのぎました」
「一国の王がそのまま永眠しそうな行為をしないでよ。仮にあなたに何かあったら今頃とんでもないことになってたわよ」
「仮にというのであれば勇者殿が今この世にいない可能性もありましたな」
「……冗談に聞こえないところが本当に怖いわ、あなた」
腰に差している剣を強く握りしめるアフリードに私は苦々しい笑みを浮かべる。
「結婚式当日は大丈夫でしょうね。国王が不在とか駄目よ」
「分かっております。その時までには覚悟を決めます」
「その時までって結婚式は明後日でしょ?」
「明日は墓所へ行っていろいろと話す予定ですのでそこで気持ちを固めるつもりです」
「墓所……」
「亡くなった妻の分も娘へ愛しんできました。これからはあの子を、いえ、既に私以上に愛する者がいることを妻と話し合い気持ちの整理をしようと思います」
アフリードの妻であり、ミグリット国の王妃は娘であるトワネスが物心つく前に亡くなっていることを思い出した。聞いた話ではとても仲の良い夫婦だったそうだ。
「今まで行ってなかったの?」
「国の復興を後回しにして会いに行くと妻に怒られますので……ですが、娘の報告はちゃんとしておかねばなりませんから」
「……いいと思うわ」
「出来れば娘と一緒にとも思いましたがそれが出来なさそうで少々心残りです」
「そういうことならステラが説得してみましょうか? 自分で言うのもなんだけど女神であるステラの事なら聞いてくれると思うし」
「女神ステラに家庭内の問題をお願いするなど」
「気にしないでいいわ。少し勇者殿と二人で話し合いたいこともあるからその場が作れるかもだし」
「勇者殿と?」
「変な話じゃないわよ」
「それは分かっていますが……重要な話なのですね」
「ええ、とてもね。それに結婚の前に一度静かに家族だけで話し合う場があった方がいいでしょ」
「分かりました。お願いすることにいたします」
「承ったわ」
願いを受け取ってアフリードの執務室を後にする。一時期仮住まいのしていたので城の内部は知っているので仲間達が集まっているだろう部屋だけを聞いてテラーとも執務室の前で別れた。
仲間達の所へ行く前に私用に用意された部屋へと一度訪れる。以前も使わせてもらっていた部屋で元々は亡くなった王妃の部屋だ。室内には王妃が使用していた調度品が置かれており、埃一つ付いてないほど毎日丁寧に清掃されている。
調度品の種類としては煌びやかな物はほとんど置いておらず、素朴な山村の風景画やシンプルな置時計など落ち着いて穏やかになれる物が多くて部屋のかつての主の人となりが感じられた。
部屋の場所は城でもかなり上層階に位置しているため窓からは城下を眺めることが出来た。上から見ても城下の賑わいはよく分かり、人々の歓喜の声が見ているだけで聞こえてきそうだった。




