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流行り言葉の消費ってスピーディ

 香織が様々な理由で家に居れない子供達が過ごすシェルターへ行ってから数日が経った。私は昼間から海外ドラマを見ては深夜まで過ごすという今まで通りの生活スタイルに戻っていた。香織とは別れ際に交換したSMSのアカウントで時々会話をしている。私がこの手のシステムに慣れてないのか分からないけれど香織の返信速度が異様に早い。私が返事を考えている間にも香織から会話が飛んでくる。私はどれに答えたらいいのかと困惑することが多いくらいにだ。

 海外ドラマを区切りのいい所まで見て時計を見ると深夜一時を回っていた。


「夜食が恋しくなる時間帯ね。いつも通り行こうかな」


 手早く身支度を整えるとコンビニへと向かう。途中、蝶ネクタイを付けた全裸紳士と遭遇したので気絶させた後で警察を呼んでおいた。

 夜を照らすコンビニの光に誘われるように向かっていくと見知った顔がコンビニの前で自転車に跨っていた。


「香織?」

「あっ、ステラ。ようやく来た。あんたここの常連じゃないの? かなり待ったわよ」

「別に決まった時間に来るわけでも毎日来るわけでもないんだけど……何しているの?」


 シェルターという寝床を得てある程度規則正しい生活を送っているはずの香織の出現に私は少しばかり戸惑った。


「逃げだしてきたんじゃないんでしょうね」


 シェルターへ避難してた子供達の中に他人との集団生活が嫌になり逃げだす子がいると斎藤君から説明を受けたことを思い出す。


「違う違う。門限ぽいのは破ってるけど、この後ちゃんと帰るわよ。それなりに気に入ってるし」

「ならいいけど……で、ステラに会いに来たの?」

「だったらどうする?」

「嬉しいけど、出来ればもっと明るい時間帯がいいわね。この時間帯のステラは基本的に海外ドラマを見ることを優先してるから」

「海外ドラマってゾンビ沢山出るヤツ?」

「ゾンビ沢山出てるドラマは沢山あるんだけど、どれのこと言ってる?」

「え、そんなにあるの? ゾンビ」

「ステラも全部見てるわけじゃないけどあるわね。サメとゾンビだけで一年は見て過ごせそうよ。サメは映画だけど」

「私、血が出てる系苦手。やっぱ見るならアオハル」

「アオハル?」


 久しぶりに聞きなれない単語が出てきた。この世界に来て三年。いろいろと学んでいるはずだけど、知らないことがまだまだ多い。


「この言い方、今じゃちょっと古いかもね。アオハル」

「アオハルってどういう意味なの」

「え!? ステラ知らないの!?」


 香織が凄く驚いている。常識的な単語だったのかな。


「ごめん、知らない。ステラってあまりテレビ見ないから流行りとかに疎いのよ」

「いや、テレビ見なくてもネットとかで見たことくらいあるでしょ」

「ネットもそんなに見ないし。人付き合いもステラ、そんなにないから」

「……ステラってぼっち? いや、それにしてはコミュ力高いけど」

「ぼっち?」

 

 また知らない単語。けど、勇者殿が似たような単語を言っていたような気がする。


「そういえば日本人じゃないんだったわ。だったら分からなくても仕方ないかも」

「……仕方ないかもしれないけれど気になるから意味とか知りたいわ。調べれば分かるけど、せっかくだから香織が教えてよ」

「アオハルとぼっちの意味?」

「そう」


 香織は少し悩むポーズをした後、自転車をこぎ始めた。


「今日はもう帰るわ。今回はちょっとステラの顔を見たくなっただけだから」

「いや、意味を教えてよ」

「次の機会ね」

「それまで焦らされるの?」

「別に調べてもいいけど?」

「いや、教えてくれるというのなら待つわ。でも、今度から来る時は事前に連絡頂戴。コンビニ来ない時もあるし」

「何時も暇そうなのに」

「ドラマ見てて食欲よりも睡眠欲が強かったらコンビニ来ないのよ」

「ああ、そういう……分かった。じゃあ、またね」

「ええ、またね」


 以前よりもいい顔をするようになった香織を見送った後、気分が良くなった私はコンビニへと入った。

 

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