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女神ステラの世界が救われた話をしよう-入場-

「それじゃ後はお任せします」


 これ以上スティルグと関わるのは避けたいのでイノセルさんにお任せしてそそくさとその場を去った。後ろでスティルグの何か叫ぶが聞こえてきたが無視した。おそらく私が掴んだままの神槍ヴェルーラのことだろう。しばらくこれは没収だ。大した反省にはならないだろうけれど、私を攻撃しようとしたのだから何もしないわけにはいかない。

 王都内を懐かしい仲間と出会いながら一通り回ったのでそろそろ城へ向かおうと足を向ける。

 行き交う人々の数も城が近くなってくると段々と少なくなってきた。普段なら観光などで一目だけお城を見ようという人もいるのだろうけれど、各地の復興が忙しいので観光でわざわざ王都へ来る人はいないためだ。

 城へと続く大橋の前には複数人の兵士が警備のために立っていた。

 歩いてここまで来たのだけれど別に正面から行く必要はない。というか女神が正面から来ては兵士達が混乱しそうだ。だけれど、招かれているのだから姿を消してこっそりというのも違う気がする。

 どうやって城へ入ろうか迷っていると鳥の羽ばたく音が上から聞こえてきた。見上げると一羽の大きな鳥が舞い降りてくるところだった。


「女神ステラ、ようこそおいで下さいました」

「久しぶりね、テラー」


 私に結婚式の事を伝えに来たミグリット国に仕えるグリフォンの末裔である鳥だ。見た目は若干大きな鳥なのだけど、人と言葉を話せるというのは確かに特殊な存在だという証だ。


「城下で騒ぎなっておりましたのでそろそろ来られるかと待っていたところです」

「騒ぐつもりはなかったんだけどね。エメオールは美人で目立つから」

「エメオール様は既にお城でお待ちになっております。後はライザック様、アルガト様も到着しております」

「アルガトも来てたのね。城下では会わなかったわ」

「荷馬車で来られたので徒歩の女神ステラとは会う機会がなかったのでしょう」

「馬車で? ならどこかですれ違っても分からないわね。表に出ていれば分かったでしょうけど」

「各国の代表者の方も目立たないように到着されております」

「目立たないように?」

「ええ、通常であれば国賓としてお迎えする方々ですが、現状それを行いますと王都内の警備などに人員資材が割かれてしまいますので王はそれをなるべく抑えたいと各国の方々に」

「王都中がお祭り状態なんだから別にいい気もするけどね」

「国民の喜びを無下には出来ませんので……これでも控えるように一応は通達しているのです」

「楽しいことは止められないモノね」

「ところで女神ステラも城内に入られるということでよろしいでしょうか?」

「ええ、王都内はだいたい見て回ったし、これ以上騒ぎも起こしたくないしね」

「分かりました。では、ご案内しますので私に着いてきてください」

「正面から行っても大丈夫かしら?」

「警備の兵士達にはあらかじめ通達をしてありますので混乱などの問題はありません。むしろ彼らも女神ステラを近くで拝見できることを嬉しく思っているはずです」

「そうなの? ならその期待には応えないとね」


 私はテラーの後を付いていく中で自分自身にかけていた変身の魔法を解く。神官の姿から白いドレスローブを纏った正装へと切り替え、髪の色も薄緑色へと戻った。

 突然の変化に周囲を歩く人達からは息を呑むような声が聞こえてくる。私は周囲の人々に向けて笑顔で手を振りながら歩いて大橋の前へと辿り着いた。

 大橋にいた兵士達が緊張した顔持ちで視線だけを私に向けている。思えば何度か城へは訪れているので私の存在はそれほど貴重とは思えない。見た所、まだ若い風貌の兵士が多い。私が以前、城へ来た時にはいなかった兵士達なのかもしれない。


「女神ステラ様のご到着である」


 テラーの声に反応した兵士達が道を開けるように左右に移動して背筋をピンと伸ばす。

 私は開けれた大橋の中央をゆっくりと歩き出して近づいてくるミグリット城を見上げる。

 緊張して一度唾を飲み込む。

 今回、ここに来たのは勇者殿と姫様の結婚をお祝いするのが目的であるけれど、もう一つ勇者殿への問いかけをするのが正直言ってこちらの方が私としては本題だ。

 聞かなくてはならない。

 元の世界へ帰ることができますがどうしますかっと。

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