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女神ステラの世界が救われた話をしよう-彼なりの挨拶-

スティルグが歓声を受けている中、万が一にも見つかったら面倒な目に合いそうだと私は早々にその場を後にした。無用な心配事だとは思っている。スティルグは勤務中であるし、多少今のようにハメを外す場面もあるだろうけれど公務全てを投げ出すようなことはしないだろう。

 広場を後にして王都で一番の大通りへと来ていた。こちらも賑わってはいたが意外に露店は少なくて人よりも荷馬車が多く通っていた。王都へ運ばれてくる物、出ていく物で馬車が行き違いになっていた。王都へ運ばれてきている物は結婚式で必要となる品々だろうか。そして出ていく物は各地方への支援物資だろう。

 王都がほぼ元通りになっているので忘れかけているが地方はまだまだ荒れている。建物もそうだけれど、田畑の荒れ具合は一年程度ではそうそう元には戻らない。比較的被害が少ない地域から物資を集めて被害が大きい地域へと王都を経由して運搬しているのだろう。

 王都以外にも各地区の大きな街では同じように物資の中継、経由として役割を持たせて各地の復興への足がかりとしているらしい。一年間各地を飛び回りながら見聞きした事柄だ。皆それぞれ助け合いながら失った日々を取り戻そうとしている。

 私が今までやっていた汚染地域の問題はほぼ片付いたので今度は荒れた田畑の回復を手助けすべきだろうか。女神の力であれば容易いことではあるけれど、手助けしすぎるのはよくないと勇者殿に言われたことがあるので悩んでしまう。

 悩み立ち止まっている私の背中越しに私の胸を掴もうと両手が伸びてきた。

 私は伸びてきた手を下へ弾き飛ばして、直ぐに回転するように後ろへ振り返り両手の主の顔を叩いてやろうと手のひらを振った。

 けれど、振り払った手は空を切ってしまう。

 全力でないとはいえこの一瞬の動作の攻撃を避けられるとは思わなかった。悔しがる私に対して相手も反撃されることは想定外だったらしく驚きの表情を浮かべていた。本当なのか演技なのか分からないけれど。


「くっそ、久しぶりに揉んでやろうと思ったのに……」

「あなたねぇ、あいさつ代わりに女性の胸を揉むはやめなさいって散々注意警告したわよね」


 私の視線の先ではフードを深くかぶり顔を見えにくくした男が立っていた。顔は見えないが声と何よりいきなり女性の胸を揉もうとするような行動で彼の知り合いならば否が応でも彼だと察する。

 ミグリット国副騎士団長スティルグ・ノール。

 一緒に魔王を倒す旅をして成し遂げた彼はつい先ほどまで広場で演武を行っていたはずだ。仮にそれが終わったとしても騎士としての公務中のはず。副団長になったのだから公務を抜け出すようなことはしないだろうという私の希望は打ち砕かれたようだ。


「女性の胸を揉みたくなるのは男として当然だろう。俺は自然な成り行きに身を任せているだけだよ」

「間違いなくあなただけの理屈よ、それ」

「そんなことないって。男どもはみんな下手に勇気無くて行動してないだけだって。勇者ちゃんだって絶対にウチの姫様とっ」


 スティルグがそれ以上言葉を発する前に彼の頬を叩く。

 脳が震えて立てないくらいの威力で叩いたのだけれど、なんとか立っている様子を見るにギリギリで顔を逸らしたのだろう。


「これからステラが祝おうとする二人に対する侮辱と思う言葉は許さないわよ」

「うぉ、すげぇ、本当に見えなかったわ……女神の全力かよ、今の」

「あのね。なんで自分が叩かれたのか理解してる?」

「分かってる、分かってる。さすがに今のは俺も言葉が滑りすぎた。分からないと思うけど俺も嬉しくて一応浮かれているんだぜ」


 反省しているとは思えないスティルグの言葉を流して私は落ち着こうと深く呼吸をする。


「で、あなたは何をしに来たの? 胸を揉みに来たとか言ったらしばらく右側しか向けないように顔を叩くわよ」

「言いそうになったけど言ってないから大丈夫だよね」

「やっぱり叩いておくわ」

「悪かった、悪かったって。来た理由だろ? 久しぶりに会ったんだから話くらいしたいと思っただけだよ」

「……あなたにそんな人並みの思いがあったのね」

「本気で言われているならさすがの俺も傷つきますよ」


 そんな繊細な心が在ったのかっとこの男にもと率直に思ったけれど、言うと傷つけてしまいそうなので思うだけにしておこう。

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