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女神ステラの世界が救われた話をしよう-スティルグ-

 ライザックと別れた後、私は再び街中へと繰り出した。少し前にエメオールと一緒に居て騒がれたばかりなので髪の色を金髪から茶髪に変えておく。それ以外の容姿は変えていない。エメオールの白銀の髪と相対していた金色の髪は印象的だったと思うし、この人通りの中にいれば女神だと気付かれることはないだろう。

 街の広場まで歩いてくると屋台の他に大道芸を行う一団の姿があった。

 陽気な音楽を奏でる楽団の前では煌びやかな衣装に身を包んだ複数人の女性達が踊りを披露して見ている観衆を盛り上げていた。その周囲には道化の恰好をした人達がおり、可笑しな動作で人々を笑わせていた。


「ここまで来ると本当にお祭りね。誰かが主催しているわけでもないのに皆がお祝いしている。露店なんかには役所の許可が必要なんでしょうけど、許可しているってことは役所……国も容認しているってことよね。喜ぶな、祝うなっていう方が無理なんでしょうけど」


 世界を救った勇者殿と自分達のお姫様が結婚するというのだ。ミグリット国民としてはとても嬉しいことなのだろう。周囲の人々に感化されて私自身も嬉しくなっている。

 ふいに大道芸人達がいる方向とは別方向から歓声が上がった。気になって視線を送るとミグリット国の騎士団の姿があり、十数人が隊列を作って歩いてきていた。

 この王都に魔王の一団が迫った際に戦った騎士団だ。元々国民の人気は高かったけれど、あの一件で今まで以上に人気が上がっているようだ。広場を巡回する騎士団には周囲の人々から感謝の言葉がかけられていた。その中でも特に一人の名前がとても強調して呼びかけられていた。

 その人物は統一された鎧兜を身に纏っている騎士団の中で一人だけ兜をせずに鎧も簡易な胸当てだけという姿でとても目立っていた。よく見ると兜を脇に抱えていた。おそらく常に自慢にしている美形な顔立ちを周囲の人々に見てほしいために広場についてから脱いだのだろう。

 規律を重んじる騎士団の中でそのような身勝手な行動をしているのだから周囲の騎士達から注意の一つもあっていいはずなのだが、誰も何も言わず、関わり合いにならないようにと行動していた。

 気持ちはわかる。どうせ注意しても聞かないと騎士団の仲間は達観しているのだろう。

 私も一緒に魔王討伐のために旅をした仲間達も同じような諦めの境地に達していた。あのスティルグに対しては。

 清潔さを感じる短髪で周囲の人々、特に女性達に笑顔を振りまていたスティルグは女性達から槍の演武を求められると即答で応じた。この場で槍を振り回すのかと一緒にいた騎士団がざわつく中、スティルグは槍を地面に突き刺した。何をするのかと見ていると地面に突き刺した槍を支点にスティルグは片手の腕力だけで自身の体を空中へ持ち上げると槍をしならせてバネのように反動をつけると空中へ飛び出した。飛んだ方角には踊っている大道芸人の一団がいた。スティルグは慌てて避ける大道芸人達の中心に降り立つと腰部分に備え付けていた短い金属の棒を取り出した。

 スティルグの取り出した金属の棒を見た周囲の人々から歓声が沸き上がった。歓声に対して満足げに笑みを浮かべたスティルグは金属の棒を見せびらかすように空高く掲げる。


「見えない奴は俺の声をよく聞け! 見ている奴は俺の握っているモノをよく見ろ! これが女神より授かった神槍ヴェルーラだっ!」


 スティルグがその名を呼ぶと金属の棒が輝きだして形を変えていき長槍へとなった。柄には幾重にも紋様が描かれており、スティルグが強く握りこむと反応して紋様が光を放つ。スティルグが握る槍、ヴェルーラには私の力が込められているため使用者に対して女神の加護が付与される。放たれる光はその効果が出ていることを現していた。


「見せびらかすために授けたんじゃないんだけど……」


 文句をつぶやくが今更返せとは言えない。授けた女神として恰好が付かないし、返してもらったところで私は槍を使えないので神殿のどこかに飾っておくことくらいしかできないだろう。槍としてのヴェルーラの事を考えると自身を扱い切れる人物が持っていることが一番幸せだろう。

 私の文句は周囲の歓声にかき消される。そしてスティルグは歓声を音楽にするようにヴェルーラを振り回して演武を始めた。最初に見せたのは単純な槍の突き。ただ動作が速すぎたために周囲の人々にはいつスティルグが槍を突き出したのか見えなかっただろう。人々が気付いた時にはスティルグは槍を突き出した格好で静止していた。

 人々の反応できたのはスティルグが突き出した槍に寄って発生した突風が吹き込んできてからだった。風を全身に受けて人々は歓声を上げた。人々の歓声を全身に受けたスティルグは槍を背中方向へと回して石突を地面に深く打ち込むと槍を支点に体を回し始めた。

 演武というよりも曲芸と呼んだ方が適切なスティルグの地面を駆け、宙を舞う姿に人々は声を出すのを忘れて見入っていた。

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