女神ステラの世界が救われた話をしよう世界-魔族騎士ライザック-
「助けた方がいいわね。このままじゃ人だかりが増えていくばかりよ」
「ですが、どうやって? 私達が出ていくと少し前と同じ状況ですよ」
「そうね……ステラだけで行くわ。一応変装しているから大丈夫よ」
「私はどうしたら?」
「後で合流するのは大変そうだし……ここで別行動にしましょう。後でお城で会うんだし、話の続きはそこでね」
「ええぇ……」
エメオールが残念そうな表情を浮かべた後、窓の外で困っているライザックに敵意を込めた視線を送った。その視線に気付いたライザックがこちらに顔を向けてきた。
「くっ、気付かれた」
「あからさまな敵意だったもの。彼なら気付くわよ。それじゃ悪いけれど先に失礼するわ」
「……はい、それではまた後で」
捨てられた小動物のように瞳を潤ませたエメオールに見送られながら店を出ると私は足を人々に囲まれているライザックへ向けた。
「ライザック様っ!」
「勇者殿の剣技の師匠にして最高峰のソードマスター!」
「寡黙な魔族騎士様っ! お顔をぜひっ!」
「握手してくださいっ!」
「弟子にしてくださいっ!」
ライザックの周りにいる人達はそれぞれ思い思いの言葉をライザックにぶつけていた。当のライザックはどの言葉から反応を返していいのか困っているようで近づいている私に顔を向けた。兜で表情は見えないけれど、助けを求めるような表情をしているのだろう。
ライザックが困っている姿はめったに見れないだけにもう少し見ていたい気持ちがある。けれど、これ以上人が増えてはそこで事故が起こる可能性もある。それを避けるためには助けなくてはいけない。
「ライザックっ!」
人々の声に交じって彼の名前を呼んで目を閉じるように手で指示を送る。ライザックになら通じたであろうと私は光の魔法を彼の眼前に放った。威力のまったくないただ眩しいだけの目くらまし魔法が周囲の人々の視力を一時的に奪う。
その隙にライザックの上空へと飛ぶと鎧の突起を掴む。そして掴んだ鎧の突起を支えにライザックの体を空中へと持ち上げ、人混みから離れた場所へと移動した後に地上へと下した。
「助かったぞ、女神ステラ」
「どういたしまして」
「早く城に向かおう。また囲まれると困ってしまう」
「もうそんなに急がなくても大丈夫よ」
「どういうことだ?」
疑問を口にするライザックの背後では先ほどまで彼を囲んでいた人々の視力が戻り始めていた。
「なんだ? 今のは……っ!? ライザック様はどこだ!」
「一体いつの間にっ!?
「おい、ライザック様がこの人混みを通ったのなら分かるだろっ! どっちに行ったんだよ!」
人々は周囲を見渡して私とライザックがいる場所にも視線を送るが特に注目することなく直ぐに視線を別の場所へと移してライザックがいないと探し続けていた。
「女神ステラよ、何をした?」
「貴方の姿はどうやったって目立つからね。今、貴方の姿は私と貴方自身以外には普通のどこにでもいるような男性にしか見えないようにしてあるわ」
「変身魔法……ではないな。女神ステラの言う通り私の目には普段通りの私の姿が見えている。人々全員に対する幻術か。信じられん芸当だ」
「そんなところよ。今のステラだから出来る芸当ってことね。どう見直したからしら?」
「女神ステラよ……もしやかつて使えない女神と言ってしまったことを根に持っているのではあるまいな」
「そんな小さい器はしてないわ。事実、貴方と出会った頃は使えない女神だったもの」
勇者殿と私、二人で旅を始めて間もない頃は何もかもにも苦労していた。もしあの頃にライザックに出逢っていなければ魔王を倒すことは出来なかったかもしれない。それほどライザックとの出会いは大事な出来事だった。




