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女神ステラの世界が救われた話をしよう世界-再開エルフ-銀-

「エメオール、ごめんね」

「え?」


 このままでは人垣を作られてしまい、まともに街中を歩けないと判断した私は一応断りを入れた後、エメオールの腰を抱き込んで向かいの民家の屋根へ飛んだ。

 民家の屋根へ着地すると路上の人達からまたも歓喜の声が上がる。羨望の眼差しを向けられる事は女神である私は馴れているけれど、エメオールはそうじゃない。元々他人が苦手な子だ。勇者殿との旅の経験で街中を歩くくらいは出来るようになったけれど、集団に見つめられることはそうそう馴れるものじゃない。

 私はわずかに震えるエメオールの体をもう一度強く抱き込んで今度はかなり離れた民家の屋根へ向けて飛んだ。その際、透明化の魔法も使って飛んでいく方向、着地場所を分からないようにした。

 喧騒が少ない民家の屋根へと降り立つと、ゆっくりと地面へと降りて人目が無い場所で透明化の魔法を解いた。


「ここまでくればしばらく大丈夫でしょ。ごめんね、私が下手に声をかけたせいで騒ぎになっちゃって」

「い、いえ、そんなことは! 大変嬉しかったです!」

「そう? 良かったわ。でも私は元々だけどエメオールも有名になったんだから少しは変装したら? 今の私みたいに変装の魔法は使えるでしょ。……そういえばよく変装してたのに私だって分かったわね」

「ふふ、その変身後の姿は以前にも何度か見せてもらっていますから。それにお顔は変わってませんし」

「そうだっけ?」


 今の私の姿は女性の神官だ。緑と白を基調とした地味目な衣服に女神ステラのシンボルである太陽がデザインされている。髪も普段の薄緑色から一般的である金色にしてある。顔までは変えてないのでエメオールのように見る人が見れば分かってしまうかもしれない。


「まあいいわ、積もる話もあるからどこかお店に入りましょうか」

「ぜひ、ステラ様のお話聞きたいです」

「エメオール、ちょっとの間、お互いを名前で呼ぶのやめましょうか。また騒動になるかもだし」

「そうかもしれませんが……なんとお呼びしたら?」

「急には思いつかないから適当にステちゃんとかでいいわよ」

「ス、ステちゃん!? そんな恐れ多いですっ!!」

「駄目か……まあ呼び合わなくても話はできるでしょ。行きましょう。あ、そうだ。私、今お金持ってないんだけど

……後で払うから立て替えてもらってもいい?」

「いえいえ、私が奢らせてもらいます! 一対一でお話をするんですからむしろ私が対価として払うべきなんです!!」

「そ、そう?」


 エメオールの意外な箇所での圧に少し引く。久しぶりに会ったせいだろうか。前からこんな子だっただろうかと首をひねってしまう。

 二人で入った喫茶店は出店などに客足を取られているせいか客は私達だけだった。適当に飲み物を注文して窓際の席に座り、外の様子を伺う。この喫茶店もそうだけれど、見えているかぎりの家々は全て真新しい。ここ一年で再建築されたのだろう。短期間でこれほど復興出来ている現状にどれだけミグリット国王が力を注いでいたのかが分かる。


「いい王様なのよね。娘を溺愛しすぎてはいるけれど」

「ミグリット王のことですか?」

「そうよ」


 エメオールが注文した飲み物を受け取りながら私と同じように外に視線を向ける。


「この周辺は確か跡形もなく消し飛んでいましたよね」

「ええ、城への攻撃を防ごうとした結果ね。王都の住民は避難済みだったから人の被害はなかったと聞いているけれど、建物は全て無くなった。それをここまで立て直すのはすごいことよ」

「そういえば建築用の木材の一部をエルフが管理する森を伐採して出したという話を聞きました」

「本当? エルフが自分達の森をって信じられないんだけど」


 エルフにとって自分達の住む森の木々は全て神聖であると掟で決まっていて伐採を禁じていた。各森に存在する一定範囲にある木々だけは生活するために伐採が許可されており、その場所以外で木々を傷つけた場合は厳罰が科せられる。

 旅の途中に魔王軍との戦いの際にエルフの森での戦闘が発生してしまい、魔王軍を倒したがその代償として森を傷つけた時にはかなりの揉め事になった。女神である私が仲裁しても彼らの怒りを収まらずに事態を解決するのに大変苦労したのを思い出した。


「もちろん伐採許可がある地域の木々ですけどね」

「それでも自分達エルフ以外に森の木を出してあげるなんて随分と寛容になったんじゃない?」

「全部の森のエルフではありませんよ。ごく一部のモノ好き部族が勝手にとエルフ達の間では酷評が吹き荒れています」

「あらあら、大変ね」

「ええ、大変です。一応私の出身部族がそのモノ好きなので私にまで被害が」

「困っているなら力になるわよ」

「いえ、お手を煩わせることでは……ただ人間達との話し合いに一緒に参加してくれとか交渉をしてくれとか私に苦手なことを頼んでくるので」

「頼りにされるのはいいことじゃない」

「そうかもしれませんけど……内心まだどの口が言っているんだろうっと私は思ってますからね」

「全部が仲直りとはいかないわよ」


 エメオールは白銀の髪を持つエルフだ。エルフは髪の色は金か赤毛のほとんど二通りで白銀は千年に一度現れるかという珍しい存在だ。それゆえか白銀の髪を持つエルフは災いをもたらすと言い伝えが発生して、エメオールを始め他の白銀の髪を持つエルフは例外なしに部族内で迫害をされていた。

 エメオールとは彼女が迫害を逃れエルフの森を抜け出して逃げ込んだ山奥で出会った。

 そこから一緒に旅をするまでと旅を一緒にしてしてからいろいろであった。そのいろいろの中にエメオールがいた部族との騒動も含まれている。その騒動で少しだけだが、エメオールと部族の仲は改善し、エメオールが魔王を倒した勇者殿の仲間として活躍したことで手のひら返しではあるのだが、白銀の髪を持つエルフ達の地位も向上することになった。

 エメオールはその手のひら返しがまだまだ気に入らないらしい。当然と言えば当然の反応だ。

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