女神ステラの世界が救われた話をしよう世界-続-
魔王の脅威から世界が救われて一年ほど経とうとしていた。
世界の各地では復興が進んでおり、私も世界各地へ飛び回り、人の力ではどうしようもない魔王による汚染の浄化を行っていた。魔王による汚染と言っても実の所、女神の力を使用しての汚染だ。魔王に奪われた女神としての私の力は全て取り戻せてはいるが、同じ力で汚染された大地の浄化にはかなりの時間がかかってしまっていた。
汚染され故郷を奪われた人達は私が来たことを大変喜んでくれただけに時間がかかっている事実に私は自身の力の無さを実感させれ続けていた。
それでも一つ一つ浄化を続けていき、先日世界に残っていた最後の汚染地域を浄化が終わった。
私は地元の人達の歓待を軽めに済ませて自分の神殿へと久しぶりに戻ってきていた。
魔王によって最初に襲撃された場所であり、復旧が一番遅れている場所だ。私に崇める神官達が一刻も早く神殿の再建をと嘆願してきたけれど、神殿の修復よりも各地の村、街、国の復旧が先だと私が後回しにした結果だ。
神殿は人里から離れた山の中腹にあり、住んでいた神官もまだ各地に散っているため今は人の気配がまったくない。ただの滅びた廃墟と化している。
「結構、植物のツタが神殿の柱に絡みついてるわね。そんなに放置してたっけ? それとも植物の成長が速いだけかしらね」
至る所が崩落した神殿の中に私の足音と独り言だけが響く。
「帰ってきたのはいいけれど、寝る場所くらいは考えておくべきだったわね。さすがに石畳の上には寝たくないわ」
今日の寝床の心配をしながら歩き続けているとかつて私が座っていた神座が見えてきた。数十段ある石階段の上に置かれた椅子は下から見上げると当人がどう思っていようと人によっては見下されていると感じてしまう威圧があった。
「立て直す時は階段を無くした方がいいわね。コレを建てた時は皆に好き放題させすぎたわ。ステラを崇めてくれるのはは嬉しいのだけど。別にステラは女神だけど支配者じゃないのよ」
神座の後ろにある扉を通って私の部屋へと行くと崩壊したままの状態で残されていた。残されたというか残すしかなったのだろうけれど。
私の部屋の半分以上が消し飛んでいて外の景色が一面に眺望できた。神殿のある山の半分と周辺の山々が恐ろしい力で削り取られ、元在った自然の景観が想像すらできないほどになっていたの眺望に魔王との最初の対決、そして女神としての力を奪われた時の事が思い返されて体が少し震える。
どうしようもない恐怖が込み上げてきそうになった時、大型の鳥が一羽、私の近くに降り立った。
「女神ステラ、頭上より失礼いたします」
「別にいいわ。あなたは空を飛んでいるんですもの。土を掘って来られたらびっくりするわ」
言葉を発した鳥に対して少し冗談で返してみると相手はどう反応を返せばいいのか困っている様子だった。
「ああ、深く考えないで。ちょっとした軽口だから」
「申し訳ありません、女神ステラ。少々イメージと違いましたもので」
「初めて会う方は大抵そうなのよ。まあこの神殿で皆の願いを聞いていた頃のイメージは割と厳格だったからね。がっかりしたかしら」
「いえ、そんなことは……」
「ステラの評価はこれからしてもらうとして、あなたはどこのどなた?」
「これは名乗るが遅れました。ワタシはテラー。ミグリット王国に代々使える者です」
「ミグリット。勇者殿が身を寄せている国ね。そういえばミグリット王国はグリフォンの末裔が王族の守護をしていると聞いていたわね。何度かミグリットには行ったことがあるけれど出会えた事はなかったわ」
「人前に出る身ではありませんので。女神ステラの事は何度かお見掛けしておりました」
思い返せば城の中や街中でよく大きな鳥を見かけた気がする。
「それで人前に出ないはずテラーがどうしてここに? 急用かしら」
「はい。女神ステラは各地を救済しており、手紙ではいつ届くか分からぬと我々王家に使える者達が総出で女神ステラを探しておりました」
「急用ではあるけれど危機ではない感じね。焦っている風には見えないもの」
「はい、魔王が倒されてからミグリット王国は復興を第一に勧めており、今では首都はほぼ昔のように元通りになっております」
「良かったわ。魔王軍に破壊される前のミグリットの街並み、結構好きだったのよ」
「そのお言葉をいただけるのはミグリットの国民として最上の喜びです」
「言葉くらいならいくらでも言ってあげるわよ。で、急用は何なの?」
「はい、実は勇者様と我がミグリット王国の姫様のご結婚が決まりました」
「あら、お互いに出会った頃からいい感じだったけれどついに結婚なのね。おめでたいことだわ」
「披露宴などが予定されているのですが、国内は復興途中であることもあり、比較的小規模で行われることになっております。参加される方々についても無理が無いようにと言われております。この度、私はお二人の結婚の報告と女神ステラの披露宴への出席の確認を行いにまいりました」
「そんなの行くに決まっているわ。二人にはとてもお世話になったし、最優先としてお祝いに行かせてもらうわ」
お祝いしたいという気持ちは本当だけれど、私は女神として勇者殿に確認しなくてはいけないことが出来た。
勇者殿はこの世界でずっと暮らすつもりなのかと。




