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モーニングは美味しい

 私がモーニングを注文したタイミングで香織が目を覚ました。


「おはよう。ゆっくり眠れた?」

「……!?」


 女神のモーニングコールという最上級の目覚めの挨拶に香織はひどく驚いた顔をして起き上がった。寝起きで昨日ことをよく思い出せていないのだろう。ならば見知らぬ場所で見知らぬ人物に挨拶されれば当然の反応だ。


「あー、あんたは確か昨日の……私は寝てたの?」

「ぐっすりとね。今は七時半よ。ファミレスのモーニングは始まってるわ。食べるなら注文するけど」

「とりあえず食べる」


 空いていることを自覚したのか香織はお腹を押さえた。

 私がメニューを渡すと少し乱暴に奪い取ってじっくりとメニューを見始めた。


「何を頼んでもいいのよね」

「いいわよ。モーニングなんてどれを頼んでもだいたい一緒でしょ」

「一番高いの選んでやるわ」


 香織は本当に一番高いモーニングを注文し終えるとコーヒーを飲んでいる私をじっと見てきた。


「どうかした? コーヒーならセルフだから自分で取ってきてね」

「コーヒー飲めないからいい。後でジュース持ってくる」

「ふーん」

「今、子供とか思ったでしょ」

「思ってないわよ。大人でもコーヒー飲めない人いるし、そうなんだって思っただけ。ところで体の調子はどう? ファミレスで慣れない体勢で寝てたからどこか痛めてない?」

「……特にどこも痛くないけど。逆によく眠れたみたいっていうか疲れが取れたみたいな感じ」

「そう、それは良かったわ」


 取り付いていたヤツを浄化した後に魔法で疲労を取ってあげたのがちゃんと効いているみたいだ。


「ファミレスって結構寝心地いいのね」

「今回だけよ。そもそも香織一人だと今までみたいに深夜は入れないわよ」

「そうなんだけどさ……ってやっぱり昨日の夜に入店出来たのはあんたが何かしたからじゃないの? 店員にお金渡したとか?」

「たまたまあの店員が親切だっただけ。昨日一回だけの親切ね」


 対応した店員が夜勤終わりで帰ったタイミングで私達の姿も会社員から普段の姿に見えるように魔法と解いてある。朝のこの時間なら女子高生がいても別に咎められることはない。

 香織は納得いかないという表情を浮かべたままジュースを取りに行った。

 その後は二人で黙々と注文したモーニングを食べた後、ファミレスを出た。


「香織は今日、この後どうするの? 学校でしょ」

「今日は土曜日、休みよ」

「そうだったの? 曜日感覚ないのよね」


 昼起きて夜まで海外ドラマを見て寝るということが習慣になっているので曜日を忘れることが多い。


「あんたどんな生活送ってるのよ」

「言ったでしょ。休暇中なの。日々ダラダラしているわ」

「やっぱ金持ちじゃん。羨ましいわね」

「長い間働いてきたご褒美期間中なのよ。仕事はすっごく苦労したんだから。死ぬかと思うほどね」

「社畜ってヤツ?」

「それとは違うわね。私は私と私の大事な皆のために行動してたから」

「確かにあんたはなんか飼いならされるってタイプには見えないけどさ」

「褒めてくれてる? ありがとうね」

「うっさい、褒めてないわよ! じゃあね!」

「ちょっと待ちなさいって」


 捨て台詞を吐いて別れようとする香織を呼び止める。


「何よ」

「今日、夜の八時に昨日会ったコンビニに集合ね」

「はぁ?」

「香織はこれからも昨日みたいなこと続けていくつもりなんでしょ」

「しょうがないでしょ。お金と寝る所が無いんだから」

「だからそれを解決……できるか分からないけど、助けられる人を連れてくるからさ。あっ、連れてくるのは警察や学校の先生じゃないからね」

「……素直に行くと思うの?」

「来なかったら探しにいくわ。香織の事は覚えたから。人探しは得意なのよ、私」

「ストーカー」

「まだストーキングしてないんだけど。そもそも必要以上に付きまとう気はないわ。今は必要だから付きまとってるの」

「完全にストーカー理論なんですけど、それ」

「……そうね。ちょっと自重するわ、今の持論」


 香織はまた私の顔をじっと見た後、諦めたように肩を落として息を吐いた。


「気が向いたら行くわ」

「ええ、待ってるわ」


 私は香織が見なくなるまでその場で見送った後、大きなあくびを一つした。さすがに眠気が強くなってきた。この後、自宅に戻る途中まで知り合いに連絡を取って今夜の約束を取り付けよう。その後、熟睡すればなんとか夜八時までには起きられるはずだ。


「久しぶりにちょっとゴタゴタしそうね」

モーニングはカリカリ食パンが好きです。

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